今回はややマイナーな山に登ってきました。甲武信ケ岳、木賊山(とくさやま)から続く鶏冠尾根上にある地味なピーク。手元の古い登山用地図には道が破線で載っていますが、新しい地図には道の表記はありません。国土地理院の1/25000地形図【金峰山(北東)】にも道は記されていません(東沢のルートは出てるのに!)。しかし、「山梨百名山」に入ってしまったせいか、webを調べると多少の山行記があるようです。また、鶏冠尾根は、沢登りの人の下山路にも時折使われている模様。
この山(写真)は、有名な観光地西沢渓谷への林道からよく見えます。一度は行ってみたいと思わせるその山容。行ってみると、見た目通りのぎざぎざした山でした。岩登りをする人なら全然問題無いと思われますが、「鎖場」という言葉で必要以上にどきどきしてしまう人はやめといた方が無難です。ちょっとした岩場が二三箇所あります。そして、鶏冠山のピークまで鎖は一本もありません。勝手な目安として、例えば無雪期の両神山八丁尾根をクサリに殆ど触れずに往復できるくらいの人なら丸腰で行けるかと思います。が、あくまで勝手な目安ですので、言う迄もありませんが最終的には各自の責任で判断して下さい。荒天時/積雪期は更に危険が増すと思われます。
今回は単車で行きました。夜明け前の柳沢峠越え、油断して薄着で出たら寒かった。気温は10℃ちょいでしょうか。下界では真夏日が続いているとは言え、もう秋ですね。ひーこら言いながら東沢山荘近くの三富村営無料駐車場に着いて、登山の出発は6:00。初めは西沢渓谷への林道をちんたら歩きます。時折、モグラの死体が道に転がってました。間違えて出てきて、暑さにやられてしまったのでしょうか。
休業中の西沢山荘前を抜け、東沢と西沢の合流地点のすぐ上に架かる吊り橋(二俣吊橋)を渡って少し登ると、「西沢渓谷」のでかい看板が立ってます。その右に、「進入禁止」と書かれロープで塞がれた道があります。鶏冠山へは、ここを突破して行きます。(吊り橋の付け根あたりから東沢の河原へ入っても同じです。)
進むうちに、「入山禁止」と書かれロープで塞がれた箇所に出ます(写真)。ここも突破して行きます。すると、程なく東沢の河原に出ます。右岸沿いの斜面に踏み跡がしばらく続いていますが、河原を行っても同じです。やがて河原が渕で途切れる所に、再び「入山禁止」の板が掲げられています。これらは、東沢の沢登りルートに安易に入るな、ってことです。
そこらの渡りやすそうな所から東沢を渡ります。流れが分かれていて、二回渡らないといけないかもしれません。私の行った時には水量が少なく、靴を脱がずとも石の上を楽に渡れました。反対側(東沢の左岸)を見ると、黒い被覆付きワイヤーのようなものがだらだらと横に長く張られています。それを辿って上流方向に歩いていくと、笹藪への踏み跡がある所に赤テープの目印があります。そこから河原を離れます。
笹藪の踏み跡を少し行くと、すぐに鶏冠谷に出ます。水量の少ない沢です。小さな滝があります。その上を渡った対岸の足元に、「鶏冠山登山道」の案内板がありました。苔むした岩が滑るので、渡る地点はもう少し上流に探してもいいかもしれません。滑って落ちても死にはしないと思われますが、出だしからずぶ濡れってのも何ですしね。因みに、駐車場からここまで一時間程掛かりました。
さてその案内板の所から、いよいよ鶏冠山への登りが始まります。初めはしばらくきつい登り。所々足場が少々悪いくらいで、踏み跡はしっかりしています。「山梨百名山」ということで登ってくる人が多いのでしょうか。いずれにせよ、大した危険はありません。三十分強で緩い尾根に合流しました。
そのまま緩い尾根を登ります。痩せ気味の尾根で展望もありませんが、道は歩きやすいので特に問題ありません。気持ちのいい樹林帯歩き。しかし、気温が高かった。つい二時間前までは単車で凍えていたのが嘘みたいです。汗だくだくだく。この道には水場が無いので、水分不足に陥らぬよう水は沢山持っていきましょう。私は2.3リッター程持って行きました。
ちんたら登って登山口(鶏冠谷を渡った地点)から一時間半弱。雨の凌げそうな岩室がありました。この辺りから登りはまたきつくなります。木の根っこに掴まったりしながら、わしわし登ります。第一の岩室から四十分程で、第二の岩室に着きました。鶏冠谷と東沢の出合、鶏冠谷を渡った地点からここまで約二時間。のろいかな?まあ、汗だくなのでこんなもんです。
ここからしばらく、横に長い崖の下を崖に沿って歩くような感じになります。やがて崖の切れ目から尾根に取り付きます。土が剥き出しの、針葉樹林帯の尾根道。結構な急坂ですが、道は歩きやすい。但し、目印の赤テープが無いと下りでは迷いそうな領域でした。登りでもテープを辿ってわしわし行きます。
針葉樹林の尾根に入ってから一時間程で、遠くを見渡せる稜線上に出ました。そしてここからは岩稜歩きっぽくなります。岩場を前にして、左右に巻き道を探したらしい踏み跡があって、結局岩を登るしかない、という場所が三箇所程。岩壁に「↑」というペイントでもあれば迷わず登るのですが、よく分からなくて何度も左右をうろうろしたりしちまいました。
最初の岩場登りは、木が生えていたりして角度の割には大したことありません。よく見ると上の方に目印のテープがあります。登れる場所は幾つか選べますので、登りやすそうな所を登ります。国師ヶ岳やら石塔尾根、行くべき鶏冠の峰、木賊山から破風山へ続く奥秩父主脈の稜線なんかも見えてきて、気持ちのいい道です。
次の岩場(写真)は、剥き出しの岩です。上の方に残置ハーケンやらザイル(でいいのかしら。私は岩登り入門してないので嘘かも。)がありました。そこを目指して登ります。登れるルートは二三ありそうでしたが、岩が崩れかけてたりする箇所もあるので慎重に手掛かり/足掛かりを探して登りました。身体の固い人はちょっと大変かもしれません。
そして最後。これも剥き出しの岩場。同様に三点確保をしつつ慎重に登ります。前の所もここも、荷物が無くて靴が柔らかかったら十秒くらいで登れそうな数メートルの岩場ですが、荷物があって靴は固いのでゆっくり時間を掛けて登りました。ふう。鶏冠山往復の場合は当然帰りも同じ場所を下らねばならないので、進む人はその辺も考えて進んで下さい。因みにこの日、このコースを通ったのは多分私一人でした。休日でも、あんまり人は多く通らないと思います。
この後は楽な道。ちょっと下ると「第3岩峰迂回路→」という導標があり、その見るからに丸腰では登れなそうな第三岩峰を右に迂回します。道は荒れていますが、テープの目印が沢山あるので迷うことは無いでしょう。しかし、登山口から岩場までの道の踏まれ方に比してここいらの踏まれ方は弱い。岩場を前に先へ進むことを断念していった人が少なくないんだろうな、と思いました。
迂回路は十五分程。がっと下ってがっと登り返し、木賊山への道と鶏冠山への道の分岐に出ます。鶏冠山へはシャクナゲやら何やらの間をほんの少し。11:50頃、「山梨百名山」の柱がある山頂へ到達しました。標高2115m。岩場が出てきてから道を探して彷徨ったり、彷徨ったついでにへんなきのこを見つけて写真を撮ったりしていたので、結構時間が掛かりました。迷い無くがしがし進めば一時間掛からない位の区間でしょうか。
山頂は西〜西南側の眺めがよく、見下ろせば東沢やその壮絶な支流が見え、向こうには国師ヶ岳やらそこから続く稜線なんかが見えて気持ちのいい場所でした。おひるごはんを食べ、日に焼かれた石で汗びっちょりの靴下を乾かしたりして、しばしまったりしました。ちょっと暑すぎでしたけど。あ、登り区間での万歩計の数値は10666でした。
一時間程休んで、12:45頃下山開始。第三岩峰迂回路を下り、登って、岩稜の道を戻ります。二つ目の岩場(写真)は、登ったのと違う所から下りました。登った時にどことどこを手掛かり/足掛かりに使ったんだか忘れちまった&新たにうまく探せなかったのでした。けど、下りに使ったルートの方が楽でした。まだまだですね。
一時間程で岩場の領域を通過。その後は迷いやすそうな針葉樹林帯を抜け、崖の下のトラバースっぽい道を通り、岩室を二つ見送って最後の尾根下りも無事にこなし、山頂から三時間程(休憩込み)で鶏冠谷を渡り終えました。そこからは遊歩道をちんたら戻り、16:40に村営無料駐車場へと帰り着きました。万歩計は21198歩。大したことありませんけど、岩場ではカウント漏れが増えますので数字以上に「長い」行程だったかと思います。
ということでこの鶏冠尾根、途中までしか行ってませんが、甲武信ケ岳への日帰り登山の登路としてはちょっと大変だと思います。余力と時間があったら木賊山くらいまで行って戸渡尾根から下りてこようかな、などという半端な覚悟で臨んだ私は、鶏冠山頂で「もういいや、今日はここまでにしておこう。」とあっさり先を諦めましたとさ。
ここから入ります。 |
この辺で渡ります。 |
ここで河原を離れます。 |
ここが登山口です。 |
岩場その一。 |
岩場その三。 |
鶏冠山頂にて。 |
今回、レンズが汚れたのに気付かぬままずっと写真撮ってました。ボケボケバァ。