Rjの登高漫歩
山歩記 - 富士山:須走口(2004.05.30)

last modified: 2004.06.02


概略

経路(標高) 地形図
須走口新五合(1970m)〜本五合(2420m)〜六合(2630m)〜本六合(2740m)〜七合(2920m)〜本七合(3150m)〜八合(3270m)〜本八合(3360m)〜八合五勺(3450m)〜九合(3580m)〜山頂久須志神社(3720m)〜八合目(3270m)〜砂払五合(2230m)〜須走口新五合(1970m) Couloir 45l AXS GTX 富士山 (南東)須走 (南西)

†出発/通過/帰着点の標高はおおよそです。

「冬富士」の残骸

今回は、僅かに雪の残る富士山へ行ってきました。出発はふじあざみライン終点、須走口新五合目です。夜明け前のふじあざみラインをローギアでのたのた走っていると、たぬきがふたつ道を渡りました。つがいかな?昨年ここを走った時には、確か兎とか鹿とか変な鳥(ヤマドリ?)を道端で見かけましたっけ。動物影の濃い領域です。

まだ暗いうちに駐車場へ到着すると、天気予報からは降雨すら覚悟していたのに満天の星空でした。流れ星も見えたし、だんだんと闇から浮かび上がりつつある富士山の稜線には登っている人のライトらしき明かりも見えました。こちらも気合いを入れつつ、スパッツを着けたり何だりして準備します。駐車場には、他に二台の車がありました。

夜明けちょい前、四時頃出発。閉ざされた菊屋他のシャッターの前を通り、「毒きのこに御注意!!」の看板を見送って少し登り、鳥居のある古御岳神社に出ます。前回はここでいきなり道を間違えたので、今回は正しい方向(向かって右)へ進みます。ここから本五合の林館まで、初めて歩く道です。

登りは緩やかな尾根道でした。気持ちのよい新緑の樹林帯、だんだん明るくなる空と木々の隙間の山中湖を見ながら歩きます。鹿の足跡が沢山あり、私に驚いて逃げる鹿そのものをふたつと、野うさぎひとつを見ました。やがて溶岩の露出する開けた所に出ます。眺めが良い。太陽の昇る方向には微妙に雲があり、その上から顔を出した太陽を拝みました。反対側にはカラフルな富士本峰も見えます。

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ご来光。
Fuji
富士。

すぐ先の鳥居を潜り、再び樹林帯に入った後、先程よりもっと大きく開けた領域に出ます。左側を見ると、谷の向こうに鹿が。その先の樹林帯は下山道がある辺りでしょう。雄大な富士を眺めながら、更に登ります。そのうちに、左下に砂払五合の広場とそこにある鳥居が見えてきました。再び樹林帯に入って少し進むと、本五合林館に到着。正面には、大分昇ってきた太陽とその下の山中湖が美しい。ここまで一時間半、朝ご飯を食べつつ軽く休憩します。既に百枚近く写真を撮っていました。

前回は古御岳神社から間違えて下山道を登り、土砂降りの中を砂走り下山道から谷をトラバースしてここへ出るまで三時間程掛かっています。やー、我ながら恥ずかしいマチガイを犯したもんだ。被害にあった同行者お二人さん、改めてごめんなせい。今度はもっと楽に登りましょう。

さて、休憩を終えて出発。まだしばらくは潅木帯を登ります。快晴、道は緩やかで、気持ちのよい登りです。この辺から、日陰に所々雪が少し残っていました。こんな時期だというのに(今年は暖かくなるのが早かったというのに)、こんな下にまで雪があるとは意外と言えば意外。しかし、考えてみると標高は既に2500m程。そんなに驚くことではないのかもしれません。

小さな小さなフジハタザオ(か何か)の花を見つけて間もなく、本五合から三十分程で六合目瀬戸館に到着。ここからも天気が好ければご来光を拝めるでしょう。ハンミョウの写真を撮ったりしてほぼ素通り、また登ります。また三十分程で本六合の小屋跡(廃墟というより、既に廃材)に着きました。

その少し先で、変な所を下ってくる厚着だけど軽装の若い白人男性とすれ違いました。やー、と挨拶して話をしました。日本語はかなり出来るようです。ここからバス乗り場に降りられるかと訊くので、もしかしてそれは河口湖口の駐車場のことかと答えました。彼はこちらへ寄ってきて、じっくり話をすることに。

どうやら、八合目で下山方向を間違えたようです。須走口にもバスは来ますが、私は今の時期どのくらい来るものなのか知らず(事後に調べたら、五月から十月までの土日祝日には御殿場駅行きのが一日二本あるようです。2004年の場合、9:30と15:00。)、彼もタクシーを呼んで帰るわけにはいかないらしいので、結局八合目まで登り返すことにしたようです。彼は昨夜、河口湖口の五合目から登って、山頂で夜明けを待ったそうです。夜九時に登り始めて四時に山頂へ着いたというから、ペースとしてはまあ「普通」でしょうか。脚が元気なら八合目までは一時間半くらいだろうと教えました。そこからは二時間くらいで下山できる、と。

しかし、登り始めた彼を見ると、彼の申告は間違っていたと気付きました。彼は四時に山頂へ着いたのではなく、(雪でペースダウンしたとして)四時間で山頂へ着いたのでは?どう見ても私の倍以上のペース(500-600m/h)で、ずんずん登っていってしまいました。上に見える七合目辺りで振り返った彼に、ストックで「(八合目は)もっと上!」と示した後はもう分かりません。そんなに山登りをしているわけではないと言っていたけれど、相当に心肺機能の強い人でしたとさ。有酸素運動ほぼ無能な私としては、うらやましい。。。

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本六合の廃材。
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雲。
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七合目大陽館。

やがて私も七合目大陽館に到着。新五合から六合目までのコースタイムは二時間、私のタイムも休憩&写真ひゃくまい以上撮影込みで二時間。六合目から七合目までのコースタイムは五十分、私の雑談込みの時間は一時間半。。。既に薄い酸素が私を苦しめています。っつか、私が薄い酸素に弱すぎです。困ったもんだ。敢え無く十五分休憩。

次は一番近い鳥居のある本七合見晴館を目指します。この辺りから道はややぢゅるぢゅる(滑りやすい砂礫)になり、雪渓を間近に見るようになってきます。登山道には雪は全くありません。七合目から五十分で本七合見晴館。コースタイムでは七合目から八合目までが五十分ですが、私は八合目まで更に三十五分、計八十五分を要しました。八合目から「次の鳥居」本八合まではコースタイムも私のタイムも三十分。私の歩くペースがそんなに変わったわけではないと思うので(上に来て1.5倍ものペースに上がるはずはない)、多分ここいらのコースタイム設定はやや無茶苦茶だということになります。これから登る人は、あまりそういった情報に惑わされずに自分のペースで登って下さいまし。

本八合目では、吉田口・河口湖口登山道と合流します(下山道の分岐は八合目にあります)。それまで、須走口登山道を登っていたのは私(と、間違えて降りてきて先に行っちゃった白人の彼)だけでしたが、ここで一気に人が増えました。驚くべきことに、この日この後見かけた登山者の1/3近くは白人男性でした。確かに夏場も白人男性が多めだとは言え、ここまでの割合は想像していませんでした。因みに、天気はここまで晴れ。ここから先は雲に覆われた領域に突っ込むことになりました。服装はここまでTシャツ、ここからはその上に長袖シャツを着ています。下は、富士山では初のユニクロ・ナイロンカーゴイージーパンツ。蒸れます。(一応上部は雪山なので、ジーンズだと周囲の目が痛いかもしれないからやめました。)

そう言えばこの日はゴミゼロの日。本八合胸突江戸屋前でカロリーメイトを喰いつつ休んでいると、そこらに捨て置かれた東芝のアルカリ単三電池四本が目に入りました。ゴミゼロの日なのに・・・と思い、何だかむしゃくしゃしたのでそれを拾ってザックのサイドポケットに入れました。ゴミ拾い登山に来たわけではないので、完全な気まぐれです。目に付いたゴミを全て拾っていたら、多分日が暮れるまでに登頂/下山出来ません。でも、誰かがゴミを捨てている所を私が目撃したら多分絡みますので、富士山に限らず捨てちゃいけない所ではゴミを捨てないようにして下さい。私に目撃されなくても捨てないで下さい。

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八合目江戸屋。
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江戸屋前の分岐案内。
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本八合胸突江戸屋。

この日、実はちょっと寝不足で、眠気が襲ってきていました。本八合目で二十五分も休んでしまいましたが、その後の登りも眠くてきつかった。酸素は薄いし、眠いしで、普通なら三歩進むところを二歩進んで一歩分休む、というペースになりました。いや、ここはもともとそんなもんなのかもしれません。二十分で八合五勺、次の鳥居がある九合目までは本八合から五十三分掛かりました。(昨年、吉田口馬返から登った時は・・・この区間を四十五分で登ってますね。やはりちと遅い。)

九合目で五分程休憩して、いよいよ最後の区間。道に雪が現れます。大部分は雪や氷を踏まずに通れますし、踏む所でも既にしゃくしゃくのシャーベット状になっている所が殆どで、足を水平に蹴り込んでやればアイゼン等を使わなくても登降出来る状態でした。私もアイゼン無しで登ってみました。折角持って行ったピッケルは、使って練習してみることに。ピッケルを刺し、二歩歩いて、ピッケルを刺し直し、二歩歩いて・・・の繰り返し。酸素が薄いこともあって、結構体力を消耗します。ずっとこれで登ってくるとしたら、かなりきつい登山になるでしょう。また、所々にいわゆる「蒼氷(げっちょんげっちょんに硬く凍って風で磨かれた氷)」の残骸みたいなものがありました。試しにピッケルを強く突き立ててみても、殆ど刺さりません。厳冬期には、ずっとこんな氷の上を歩くのでしょうか。こんなんじゃあアイゼンを研いで思い切り蹴り込んでもちこっとしか引っ掛からないでしょう。「滑ったら終わり」という状況を、実感を伴って想像出来た気がします。

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九合目の鳥居。
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雪道はこんな感じ。
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やった。山頂。

てな具合にいろいろ試しながら息を切らせてよたよた登り、九合目から五十分掛けて山頂の久須志神社に到着しました。ふはー。疲れた。。。結局、出発から八時間も掛かっています。天気が好かったら&余力があったらお鉢巡りをしようと思っていたのですが、山頂は完全に雲の中だし余力もあまり無かったのでやめにしました。おひるごはんのカロリーメイトを食べてしばらく休み、下山することに。下りは折角持ってきた12本爪アイゼンを着けてみることにしました。夏の下山道は雪渓に覆われていて、スキーの跡や果敢な猛者の足跡二人分くらいしか無いので、登山道を下ります。

アイゼンを着けると、しゃくしゃくのシャーベット雪を歩くのは楽です。踏み跡を辿るとあまり意味が無いので、踏み跡の無い雪や緩んだ氷の上を歩く練習をしました。目指せレベルアップ。と言っても短い区間ですので、あっという間に終わってしまいました。アイゼンを外し、ピッケルをストックに持ち替えてぽとぽと下ります。

山頂から四十五分程掛けて八合五勺へ。何だか頭が痛くなってきました。前回富士山へ来た時(富士宮口から登った時)も帰りに頭が痛くなり、高山病かなと思っていたら実は風邪を引いていただけだったのを思い出し、無理しないようにしました。十五分休憩。山頂から一時間二十分程で八合目へ。途中、本八合目ではチョウの、八合目ではカメムシやらアブやら何だか分からない小さいむしたちの写真を撮りました(気温が10℃前後なので、むしはみんな動きが鈍っています)。普通に下ってくれば一時間弱でしょうか。

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蝶。
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亀虫。
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虻。

八合目から、登山道を戻るか下山道を行くか迷いました。前回須走口から登った時は下山道から下ったので、今回は(登ってくる人もいないだろうし)登山道から下ろうかとも思いました。が、下山道の先に見えた「雪渓をブルドーザーか何かがぶった切った断面」が何となく面白そうだったので、下山道を行ってみることにしました。

道はらくちん。時折晴れ間がのぞいたり、一瞬でまた霧に覆われてしまったりしつつ、ずんずん下ります。最初のうちは道もしっかりしていて、特に戸惑いを感じることはありませんでした。が、下の方へ行くに従って道は荒れ、たかだか一年弱の間にこんなにも侵食が進むのかと驚かされます。踏み跡は希薄、「下山道」を示す導標も流れてしまっているものが多いらしく、幾度か立ち止まって進むべき方向を考えさせられました。

それでも、一瞬の霧の晴れ間で遠くに導標を見つけたり、見失った踏み跡をうろついて再び見出したりしながら、何とか無難に下ることが出来ました。一度歩いたことのある道で(前回通ってから一年も経っていないのに)「ルートファインディング(道探し)」のようなことをさせられるとは思っていませんでした。幼い山というのは侮れません。初めての人は、やはり七月の山開きを待ってから行くのがいいと思われます。

そんなこんなで、山頂から二時間半程で砂払五合に到着。頭が痛いのでやけに長く感じましたが、時間としては大して掛かってませんでした。靴やスパッツの砂を払いながら休んでいると、柔らかな雨が降り出しました。そう言えば前回須走口を降りた時も最後の樹林帯でしとやかな雨に降られましたっけ。しばし休み、ザックに塗った小川キャンパルの「塗る防水剤」の効果を試すべく、ザックカバーを出さずに下ります。

最後の樹林帯はよいものです。新緑、芽吹いた草花、静かな森。道は歩きやすく、写真をいっぱい撮りながら三十分弱で古御岳神社に戻りました。神社からの最後の二分の間に雨は強まり、観光客がそこそこ来ている二件の山小屋(お土産屋さん)の前では頭がびしょびしょになってしまってました。ここへ来る観光客の人は、小富士辺りまで行くのでしょうか。私はまだ行ったことが無いので、今度行ってみたいと思います。

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樹林帯その一。
jurin 2
樹林帯その二。
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そして古御岳神社へ。

車に戻り、この程度の時間なら「塗る防水剤」だけで万全だったと確認し、靴を履き替えて帰り支度。ここまで、万歩計は22957歩でした。前回の須走口往復時は22168歩。上部と下部で多少異なるルートを歩んでますが、結果としては大差なかったようです。そんな訳で、今回も無事に楽しく山行を終えることが出来ました。雪も踏めたし、いろいろ勉強になった一日でした。しかし、何回行っても上の方の薄い酸素領域は楽にならないなあ。もっと頻繁に行けば慣れるんでしょうけどね。

そうそう、最後に念の為書いておきます。今回私の見かけた山小屋は、帰りに通った(車で行ける)新五合目の二軒以外全て閉まっていました。途中にトイレは一つもありませんし、飲料を購入できないばかりか水場も全くありません。観光登山者の方は、七月の山開きをお待ちになるようお願い申し上げます。


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