last modified: 2004.08.18
経路(標高†) | 鞄 | 靴 | 地形図 |
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【一日目】竹宇駒ヶ岳神社手前・尾白川渓谷駐車場(780m)〜横手・白須分岐(1520m)〜刀利天狗(2049m)〜五合目小屋(2150m)〜七丈第一小屋(2360m)〜第二キャンプ場(2390m) 【二日目】第二キャンプ場〜八合目御来迎場(2680m)〜甲斐駒ケ岳(2967m)〜刀利天狗〜尾白川渓谷駐車場 |
Alpine Pack 60 | AXS GTX |
甲斐駒ヶ岳 (南東) 長坂上条 (南西) |
†出発/通過/帰着点の標高はおおよそです。
ヒメシャジン(花)とミヤマクワガタ(虫)
日本の一般登山道としては長いものとして有名な、甲斐駒黒戸尾根に行ってきました。慣れた人は日帰りなどするようですけど、私は最初なのでひとまず無難にテントを担いで一泊二日の行程。登る標高差は約2200m(累積だともっと)、富士山に吉田口馬返から登るのと同じくらいです。しかも、富士山と違って途中に岩場もあり、体力の要りそうなコース。20kgを背負って歩くのはこれが二回目。一回目は尾瀬散策で殆ど高低差も無かったのですが、今回はどうなることやら。
事前に高層天気図など(専門天気図のサイトにあるもの)を見て確認したところによると、天気はまあ安定してそう。危険な程の雷も無さそうだったので、多少の雨に降られるくらいは良しとしてちんたら行ってきました。(この時期、南アルプスでは毎日のように夕立があります。降られたくない場合、遅くとも14時頃迄には行動を終了すべしというのが通説です。)
出発は、竹宇(ちくう)駒ヶ岳神社の手前にある駐車場。黒戸尾根の登山口として、もう一つ横手駒ヶ岳神社というのがあります。どちらから登っても時間的には大差無いようですが、尾白川(おじらがわ)渓谷をちろりと見られるので竹宇にしました。天気は上々、朝六時前に歩き始めます。(これは、足の遅い人が黒戸尾根に入る時刻としては遅い方です。)本殿の焼け落ちた神社を見送り、吊り橋を渡って登山道へ。ここからは渓谷沿いの遊歩道が分かれています。
道の駅はくしゅうから |
白州町営駐車場 |
竹宇駒ヶ岳神社 |
しばらく樹林帯を登り(途中でへびを見ました)、遊歩道の分岐を過ぎ、木の枝等で塞がれた巻き道の分岐も見送って笹が増えてくると、やがて横手からの道が合流します。ここまでで既に汗だく。休憩し、水分等を補給してからまた登ります。樹林帯の歩きやすい道。少し先で巻き道が合流してきます。そこにある「白須」方面を示す導標の文字は、ペンキで消されていました。道が崩壊しているのでしょうか。昭文社の登山用地図によると、この巻き道沿い、粥餅石の辺りに水場があるとのことですけど、普通に登ってきたらそっちは通りません。
樹林帯の登り |
樹林帯の登り |
白須・横手分岐付近 |
ずいずい登り、急坂になってしばらくすると、尾根が痩せてきて「刃渡り」の近いことを知ります。やがてその刃渡り。名前は恐ろしげですが、雪氷の無い時期は特に危険な箇所でもないようです。T-REXが渡るんなら文字通り刃渡りっぽくなりそうだけど、人間サイズの生き物が通過する分には足元も広く、心配要りません。上に向かって右の斜面はだいぶ下まで見えますが傾斜が緩く、向かって左の斜面は急角度で落ちているものの樹木があって高度感が損なわれています。
ホツツジ |
刃渡り |
はしご登場 |
刃渡りを過ぎると、間も無く刀利天狗。祠等があり、ベンチもあって休めます。そこで休憩。同じく下から黒戸尾根を登ってきた単独行の男性と少し話をしました。彼曰く、「(七丈までは)もうすぐですよ。」と。んーむ、重荷慣れしてない私にコースタイム二時間強の行程はそんなにすぐでもないんですが・・・因みにこの人、七丈の幕営場ではお隣さんとなりました。
刀利天狗からは黒戸山(黒砥山)に向かって登ります。と言ってもピークは巻き、緩やかな山腹の道を進みます。「←五合/15分」とか書かれた切り株を過ぎ、つつっと下ると五合目小屋(殆ど廃墟)が見えてきました。コルを挟んだ対面にはぽっこりした岩峰(屏風岩?)があり、アレを登るのかと思いつつ更に下り、僅かで五合目の鞍部へ到着。ここには以前「屏風小屋」という小屋があったようです。今は廃材が少し残されているだけ。尾白川渓谷から黄蓮谷千丈滝を経て登ってくるコースがここで合流しています。
刀利天狗 |
五合目小屋 |
屏風小屋跡 |
さていよいよ初日最後の登り。いきなり長い梯子に取り付き、その後も梯子が沢山登場します。調子こいてずいずい登ると息が切れてしまうので、ゆっくりのったり登りました。雨がぱらぱら降ってきたりしましたが、特に難しい箇所はありません。一箇所、ちょっとだけ高度感のある梯子がありました。段々雰囲気が高山っぽくなっていって、気分が高揚します。やっぱり高いところは楽しいですね。って、私は煙かい。
五合目のコルから一時間程で七丈第一小屋に到着。小屋で幕営料500えんを払い、ちょっと上にあるキャンプ場へと進みました。因みにこの小屋、いろんなもんを貸し出してくれるようです。一人用テント500えんなんてのもあるので、担がずに借りた方がらくちんなこと間違い無し。第二キャンプ場(二段あるテント場の、下の方)までは私の脚で登り六分程でした。先着三張、雨が少し強くなってきたので、急いでテントを張りました。よく整えられた地面で、貸しペグと木づちが置いてあります。またしてもペグを打って設営。
見た目程恐くない |
七丈第一小屋 |
第二キャンプ場 |
無事テントを張り、腰を落ち着けて食事の支度。今回の晩ご飯は、お米を持って行って炊きました。雨だったから、調理にはテントの前室利用。ご飯炊きは家で二回くらい練習して行ったので、まあまあうまく出来ました。おかずは即席たまごスープに具を追加したもの。チキンソテーとかもあるといいなあと思いつつ食べました。日暮れと共に就寝。夜中に目が覚めて空を見上げると、見事な星空でした。遠くで雷が光ったりもしていましたが、天の川や流れ星も見えました。山はいいな。
四時に目覚ましで起きました。晴れ。闇から徐々に浮かび上がる眼前の鳳凰三山が見事。その横には富士山も見えました。この時刻、早い人はもう登ってます。私は朝ご飯に持ってきたフランスパンとソーセージを齧り、野菜ジュースを飲み・・・忘れました。七丈第一小屋まで降りて水を補給し、トイレを済ませ、登り返してサブザック(ライペンのポケッタブルザック)に水や雨具、食料等を詰め込み、テントはそのままにして出発。
少し登ると、第一キャンプ場がありました。広さは下よりちょっと狭いくらい(テント10張分くらい?)、誰も使っていないのか、地面には雑草が生えていました。そこを過ぎ、いよいよ高山らしくなってきた道を登ります。サブザック、ああ何て軽いんだろう。天気もいいし眺めもいいし、身も心も軽くて最高。やがて雲の上に八ヶ岳や奥秩父も見えてきて、天界の雰囲気満点。やめられません。
夜明けの鳳凰三山 |
雲に浮かぶ八ヶ岳 |
タカネナナカマド |
道は所々に梯子や鎖のある岩場で、上を登っていた二人組は「涸沢(から登る穂高岳?)より大変だ。」とか何とかぼやいていましたが、知ったこっちゃねえずら。こんなの乾徳山より容易です。規模は違いますけどね。やがて八合目御来迎場。石の鳥居があるとのことでしたが、崩壊していて鳥居と判りませんでした。でも眺めは最高。甲斐駒本峰から摩利支天、北岳から続く南アルプスの峰々、鳳凰三山、そして富士・・・気分いいなあ。
八合目御来迎場からの景色(富士山、鳳凰三山、北岳、摩利支天) |
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甲斐駒を特徴づける花崗岩 |
剣と富士と鳳凰三山 |
鋸岳方面 |
しばし堪能してから上を目指します。道は相変わらず岩がごろごろしていたりしますが、登れば登っただけ山頂が近づき、摩利支天が低くなり、楽しい登りです。サブザックは軽いし。途中、剥がれ落ちた誰かの靴底(ポリウレタンミッドソールの加水分解によるもの)を見ながら、右の方にある鋸岳も見ながら、調子よく進んでやがて東峰に到着。駒ヶ嶽神社本社があります。そこから数分で三角点のある甲斐駒ケ岳山頂に。やった。登頂。
東峰のいろいろ |
三角点峰の祠 |
すぐ目の前にある仙丈ヶ岳が見事。どっしりした立派な山ですね。あそこへもいつか登らねばなるまいと思いつつ、フランスパンの残りを食べたり水を飲んだりして休憩。中央アルプスは雲に隠れがち、北アルプスは完全に雲の中でしたが、それでも周囲は気持ちの好い眺めです。午前八時台、この時間帯に山頂に居るのは山慣れしたような男性ばかりでした。しばらく休んで下山する頃になると、所謂中高年のヒャクメーザン信者が増えてくるようです。で、だんだん山々は雲に覆われ、景色も楽しめなくなって行きます。夏に甲斐駒を目指す人は、なるべく早い時間帯に山頂へ着くことを心掛けるといいでしょう。
山頂からの景色(北岳から仙丈ヶ岳方面) |
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雲に覆われる鋸岳方面 |
雲に覆われてる中ア方面 |
雲海 |
さて下山。来た道を戻ります。荷が軽いので足・脚の都合による困難はありませんでしたが、サブザックのストラップが擦れてちょっと痛くなりました。ここら辺は対策の余地あり。雲に覆われてきて視界も減ったので、道端の花々やカエルの写真を撮ったりしつつさくさくと降りてきました。っつか、「こんな高い所に何故ヒキガエルが?」と、びっくり。標高2500mを超えてる所です。
イワツメクサ |
タカネツメクサ |
トウヤクリンドウ |
ミヤマアキノキリンソウ? |
ヤマハハコ |
シナノオトギリ |
ヤマヒキガエル! |
ガンコウラン(実) |
祠の類が多い山 |
テント場に着いて、早めのお昼ごはん。即席ラーメンです。あと、朝に飲み忘れた野菜ジュース。一息ついてからテントを撤収。フライシート内側の結露も乾いていて問題無し。メインザックに全てを積み込み、えいやっと背負った時の重たさはちょっとショック。サブザックの軽さに慣れてしまっていたのでした。けど、メインザックの重さにもすぐに慣れました。前回の尾瀬と今回(前日)の登りで、ストラップの調整は大分上達したようです。そして下へ向かいます。まずは七丈第一小屋で水を補給。この先、水場はありませんから、一応たっぷり汲みました。汲みながら、登って来ていた単独の男性とちょっと話をしました。明朝、山頂を目指すなら早めの方が景色いいと思いますよ、云々。
七丈小屋から五合目までは急な下り。梯子を使ってずんずん下ります。登山者の多い時には少々余計な時間が掛かるかもしれませんが、幸い登ってくる人は少なかったので「待ち」に時間を取られることも少なくて済みました。最後の長い梯子を降りて五合目のコルに到着、軽く休憩。その先はこの日最大の登り返しが待っています。来る時、ここの登り返しは大変だろうなあと覚悟していた所。
ミヤマシシウド |
? |
一番恐そうなところ |
でも覚悟していたお陰か、それ程のきつさも感ぜずに登り切れました。ま、標高差で言うと100mも無い程度なので、過剰に覚悟しすぎだったのでしょう。黒戸山を巻き、少し下って刀利天狗へ。ここでも軽く休憩。まだまだ先は長いのです。
刀利天狗を出発し、僅かに下った刃渡り付近からは前日見えなかった下界が見えました。気分いいなあ。アゲハとかアサギマダラみたいなのとか、変わった蝶も見ました。この山、キノコと蝶が多いようです。きのこが多いということは雨が多い、森が深いということです。しっとりした独特の雰囲気。いい山ですね。
ハクサンオミナエシ |
? |
綺麗なチョウ |
刃渡りを過ぎ、樹林帯の道をずんずん下り、ずんずん下り、ずんずん下り、横手・白須分岐の少し手前で休憩を入れました。すると、雨が降ってきました。あれれ、と思ってこのザックでは初のザックカバー装着。さかいやのバーゲンで買った、小川キャンパルのやつです。ちょっと改造してみた(中央部に、ばたつかないよう留める紐を付けた)ので、試すのが楽しみでした。ふふふ。
などと浮かれていたら、雨はあっという間にものすごい降りになりました。時間雨量50mmは優に超えてそうな豪雨です。慌てて雨具の上を着ましたが、その間に下はもうずぶ濡れ。だめだこりゃ、と思ってそのまま下半身ずぶ濡れで行くことにしました。道は川と化し、濡れたずぼんから靴下へと水分は伝い、靴の中まで濡れてしまいました。少し降りると、前を歩いていたおじさんが心細そうに白須への巻き道分岐で待っていました。ええと、こういう時は水の流れている所を歩く方が滑らなくてよいですよ、滑る泥が流されていますからね。因みにザックカバーの機能は上々でした。下に水も溜まらず。
土砂降りの中をじゃばじゃば進み、間も無く横手・白須分岐。先のおじさんは横手方面に下っていきました。お気を付けて。滑って転んで怪我しないといいけど・・・私は白須(竹宇)方面へと進みます。徐々に雨も弱くなり、長い最後の下りをちゃくちゃくと下りました。最後の方、久々に膝上のきんにくがぷるぷるしてきました。流石黒戸尾根、といった所でしょうか。や、鍛え方が足りないだけと言えばそれまでですけど。
長々と下って、ようやく尾白川に掛かる吊り橋に到着。尾白川は増水してどろどろの濁流になってました。すごい。こんな時に沢登りしてたら流されて死ぬでしょうね。幸い、尾根道にはそういった危険はありませんけど。神社から駐車場まで、車の通れる道をちんたら登って、駐車場に着くと「やった。」という満足感が込み上げてきました。やった。今回の山歩きも無事終了。たっぷりと楽しんだ二日間でした。
万歩計の数値。初日の登り、駐車場から七合目キャンプ場まで10067。二日目、そこから上は岩場が多く、万歩計をウエストポーチに着けたこともあってカウント漏れの嵐、山頂まで836。山頂から七丈第一小屋までの下りが4371、七丈第一小屋から駐車場まで11260。合計で26534歩でした。行程の割にすげえすくねえ。
と、いうことで、次回は軽装での日帰りに挑戦したいと思います。いや、まだ無理かな?七合目位までの往復なら出来そうですけどね。