Rjの登高漫歩
山歩記 - 富士山:富士宮口(2005.08.17-18)

last modified: 2005.08.23


概略

経路(標高) 地形図
富士宮口新五合目(2380m)〜浅間大社奥宮〜剣ケ峰(3776m)〜銀明水〜御殿場口七合目(3040m)〜宝永火口〜富士宮口新六合目(2490m)〜富士宮口新五合目 Air Master 32 AXS GTX 富士山 [南東]

†出発/通過/帰着点の標高はおおよそです。

最弱ルート制覇

annnaizu

プロローグ

念願の最弱ルートを歩いてきました。富士宮口新五合目から登り、御殿場口を七合目まで下って宝永火口経由で富士宮口に戻るというものです。同行は、登山なんて遠足くらいでしかしたことのないZ氏。若くて元気そうだし、比較的運動も好きだというから多分大丈夫でしょう。靴は履き慣れたスニーカーがあるとのこと。これは、富士登山でダメになってしまう可能性を事前に伝えました。当日Z氏が履いてきたのはConverse All Star布製ローカット級の品。うーん、本当にダメになるかも。。。

因みにそのZ氏、故あってどうしても今夏富士山に登りたい、とのこと。ご来光も見たい、とのこと。ご来光は本当にお天気次第だから何とも言えません。初めての富士登山で夜間登山はきついけど、ご来光はダメ元の覚悟が出来ているようだから夜行くことにしました。晴れるといいんですけどねえ。


アプローチ

夕方都内を出て、東名高速へ。お盆休み終わりの帰省Uターンラッシュで渋滞している上り線を尻目に、下り線を順調に走ります。鮎沢PAでトイレ休憩を入れ、御殿場ICで東名を降り、R138からR246を経由して富士山スカイライン方面へ右折し、7-11に立ち寄って食料補給。もう真っ暗で、富士山の山小屋の明かりだけが見えていました。ここではまだ少し曇っていましたが、更に進むと晴れてきて、水が塚の駐車場では夜空にくっきりと曖昧に浮かぶ富士山のシルエットを堪能。もうすぐ満月な月がまぶしい。

その先で新五合目方面へ右折し、他の車とちらほらすれ違いながらずんずん登ります。登るに従って月が一層まぶしくなります。お盆休み明けだから駐車場はそんなに混んでいないだろうと祈りつつ登っていくと、おお、一番上まで行けました。売店の斜め前辺りに駐車スペースを確保。やった。月を眺めたり売店の写真を撮ったり準備体操をしたりおにぎりを食べたりしてしばらくのんびり過ごします。これも大事な登山過程の一部。

周囲には、やたら装備を固めた人達がわらわらしてました。山頂でご来光を待つ時のような格好です。そんな厚着して登り始めたら暑いよ・・・因みに気温は13℃程でした。晴れ、風弱し。余談ですが、Z氏は駐車場に着くと嬉しそうにあちこちで写真をいっぱい撮っていたので、上に行くと寒いから電池がすぐなくなっちゃうよ、と言っておきました。でも予備の電池があるそうです。頼もしい。

富士宮口は山小屋が適度な間隔で続くので、登るペースを掴みやすくて楽です。新六合目から新七合目、七合目、八合目、九合目、九合五勺、山頂の区間に分けると、最初の二区間がそれぞれ約一時間のペースなら残りの区間はそれぞれ四十分前後で行けるでしょう。新五合目から新六合目までの準備運動区間を含めて、歩く時間の正味合計で約五時間。今回の私達は大体そんなペースで歩きました。大休止(長めの休憩)を取るなら、八合目がいいと思います。でも今回の私達は、駐車場出発が午後九時半頃。順調に登ると午前三時頃には山頂に着いてしまう計算になるため、山小屋で止まる度に多めに休んで時間調整しました。山頂で日の出を待つ時間は寒そうですから。


登り

01_shin-5goume 一時間くらい駐車場付近でまったりして、いよいよ出発。月明かりを受け、ライトは要らない状態です。私は紐を付けてずぼんのベルト通しにぶら下げたミニマグライトをポケットに入れ、手にはBlack Diamondのヘッドランプを消灯状態で持って出発。Z氏は手ぶら。初めは緩い登り。身体慣らしの意味を込めてゆっくりゆっくり歩きます。時々脈拍をチェックして適度な値を超えないように、なんて話をしながら様子を見ましたが、Z氏の場合は特に心配無さそうなくらい心肺機能が強そう。少なくとも、のろのろしか登れない私と一緒に歩いている限りは大丈夫と見切りました。
02_shin-6goume トイレに寄りつつ25分程掛けて新六合目に到着。ここまでは坂が緩く、「ここから本番」の看板通り、この先が本番です。坂が急になります。山道を歩き慣れないZ氏は下が滑ることをやや気にしていました。靴のせいもあるかもしれません。出来るだけ、つま先で地面を蹴らないように、そっと体重を移動させるようにすると滑りにくいです。ここでは、まだ周囲の人達もみんな元気。
03_shin-7goume 新六合目から先は急な坂に入ります。途中の旧六合目は廃墟と化していて、夜の闇の中では既にその残骸すら見出せませんでした。「ここだったかな?」という場所を見つけつつ、ゆっくりと登ります。前後には程よい感じで人が居ます。ずんずん追い越して行ったかと思うとすぐ先で止まって休んでいる、といったことを繰り返している人達もいます。これは疲れるのでやめましょう。ゆっくりと一定のペースで歩き続ける方が楽です。月明かりに照らされた雲海を眺めながら、一時間程で新七合目に到着。左の写真は新七合目から見た雲海。月明かりに浮かび上がり、幻想的。
04_7goume 新七合目から七合目までの区間は、きちんと上まで行くペースを作る区間です。ここで飛ばしすぎると八合目辺りでへばります。月が明るいのでまだライトは要らず。星空は月の明かりで多少陰ってはいますが、上空には雲一つ無く風もまだ弱めで快適な山登りです。一歩一歩、ゆっくりと着実に標高を稼いで行きます。約一時間程で七合目に到着。
05_8goume 七合目で標高は既に3000mに達し、次の八合目までの区間で国内の他の高峰どもをがしがしとぶち抜いて行きます。あ、子供が途中でへばってる。がんばれ、子供。おとうさんと二人連れでしたが、おとうさんも初めてらしく、子供に「ゆっくり登る」ということを教えられないようでした。うーむ。私達は七合目から35分程で無事に八合目へ到着。日の出の時刻を考えて長く休んでいると、下からはぞくぞくと人が登ってきます。既によれよれになっている若者も少なくないようです。勢いだけで来ちゃうと、この辺で力尽きてしまうんですね。この辺りで気温は10℃弱。風がやや強くなってきます。止まって休んでいると身体が急激に冷えるので、休む間は着込みましょう。左の写真は、八合目の救護センターと月。
06_9goume 八合目まで身体の不調も無く辿り着けたら、あとはペースを守りさえすればほぼ時間の問題で山頂まで行けると言ってもいい状況です。残り三区間、慌てず歩を進めます。暗くなってきたのでライトを使いつつ、私達も順調に35分程で九合目へ。この辺りから大分人が増えてきました。時間的に丁度「山頂でご来光目当て」の人達が増える頃、山小屋泊の人も加わったりしています。でも、渋滞までは行きませんでした。速い人が追い付いてきたら道を譲り、自分は自分のペースで登ります。月が潜んだので星空が凄まじい。天の川が明瞭になり、流れ星も沢山見えました。
07_9gou5shaku 九合目を過ぎた辺りから、私は酸素の薄さを強く感じるようになります。何度来ても慣れない。ので、諦めてのろりのろりと登ります。同行のZ氏は、ちょっと眠そうでした。でも、弱音を吐くこともなく順調に登れているようです。いいぞ。また35分程で最後の山小屋、九合五勺の胸突山荘に到着しまくり。短めの休憩を入れ、身体が冷える前に最後の区間へと進みます。また35分のアルバイト。道中、そこいらに座って休んでいる人も結構います。もう少しだから気合い入れろやゴルァ、とか思いつつゆっくりゆっくりと通過。

山頂

08_choujou そして午前四時、無事に頂上浅間大社奥宮に到着。やった。ほっと一息つきつつ、防寒着や雨具を着込みます。ここまではほぼ快晴の天気でした。しかし、この後霧が流れてきて、微妙な雰囲気に。本当は吉田口頂上方面まで行って日の出を待とうと思っていたのですが、通路が既にご来光待ちの人達で塞がれていた為、私達もここでご来光を待つことにしました。角度的には一応見えるようです。
09_goraikoumae 左の写真は日の出を待っている間の一枚。この後、豪霧というか暴霧というかそんな感じの強風と霧雨に晒され、さむいさむい。気温5度弱、平均風速10m/s強でしょうか。私は上半身=Tシャツ+夏用長袖山シャツ+ポリエステル中綿入り防寒着+ゴア雨具上、下半身=ダクロンQDのぱんつ(下着)+ユニクロのナイロンカーゴイージーパンツという格好だったんですが、面倒臭がらずにゴア雨具の下も履けばよかったと思いました。同行のZ氏は、私の貸したものも含めて上半身六枚着ていたせいか、さほど寒くはなかったとのこと。
10_kaaru 日の出時刻を迎えても晴れないので、山小屋に入って休憩。人が溢れて大変な中、辛うじて席を確保。時折外が明るくなるとZ氏は写真を撮りに外へ出ていましたが、やがて疲れて眠ってしまいました。しかし、そのうちに時折霧が切れるようになり、この分だとちょっとは山頂からの景色を堪能出来るかな、と期待。折角登ったんですから、ご来光はダメでも山頂からの景色くらいは見せてあげたいところ・・・とか思っていたら、晴れてきました。早速Z氏を起こして剣ケ峰を目指します。

山頂での写真

11_taiyou
晴れた!
12_to-kengamine
剣ケ峰へ
13_akaishi
展望台から南アルプス
14_kage-fuji
影富士
15_at-kengamine
3776mにて
16_taiyou
雲海
17_hakusandake
白山岳方面
18_kumo
19_ginmeisui
銀明水(左奥)

下り

前半

20_houei-houmen 景色を堪能して、下山開始。今回は、銀明水のところから御殿場口登山道を下り、七合目から始まる大砂走の途中で宝永山方面へ逸れるルートを選びました。登りの富士宮口は一番楽ちん、しかし下りは固い岩場の急坂が続くため膝や足への負担が大きい。下山慣れしていない人にはかなり苦しいものとなるので、迂回路です。楽ちんな上、霧が出ていなければ壮大な宝永火口の様子を間近に堪能することが出来るルート。左の写真は、宝永山を見下ろしたところ。
21_akaiwa-kan 御殿場口登山道の上部は、火山礫がぢゅぐぢゅぐです。登ると泣きそうになるこの路面、下りでは無造作に足を置いても衝撃が和らぐため、脚への負担が少ない。それでも脚に疲労が来ていたZ氏はやや辛そうで、時々ずるって滑って転んでました。でも怪我するような転び方はしなかったので良かったです。急ぐ旅でもないので、ちょこちょこ休みながらゆっくりと下りました。陽射しがすごかった。左の写真は八合目の赤岩館。ペンキ塗り直し中でした。
22_hinode-kan 七合目から先、いよいよ富士下山名物の大砂走が始まります。と言っても、私達はその触りの部分だけを通って宝永山方面へ逸れてしまいます。分岐にはきちんと導標があるので、うっかりしていなければ迷うことは無いでしょう。霧の濃い時にはやや注意が必要かと思われますけど。あそうだ、砂走と言えばスパッツ。砂が靴に入るのを防ぐためのものです。私はハイカットのトレッキングシューズだからいいけど、同行のZ氏はローカットのスニーカー。私のスパッツを貸すつもりだったのですが、付けてみたら甲周りが細すぎて固定出来ませんでした。ごめん、Z氏。靴の中は砂まみれ必至です。

宝永山付近の写真

23_houei-bunki
宝永山への分岐
24_houei-kakou
宝永火口へ下る道
25_houei-fuji
富士山頂方面

後半

26_ashi 宝永火口の底へと下る道は、大砂走と似たような非常に深い砂でした。ずぶずぶ靴が潜ります。足首までずっぽり潜ってしまう状態。ローカットでスパッツ無しのZ氏の靴は、だんだんとその中が砂で埋まっていくとのことでした。ガンバレ。。。しかし膝への負担は非常に軽く、脚力に自信の無い方にはオススメのルートです。宝永火口の壮大なる景色も疲れを癒してくれるでしょう。写真ではどうやってもこのスケール感を再現出来ない気がするので、是非一度自分の目で見てみて下さい。
27_rakuseki 火口の底付近には、でっかい落石がごろんごろんしていて、ホタルブクロやイワオウギ等が咲いていました。ここから富士宮口新六合目に向かっては緩やかな上り坂。でも、大したことありません。ゆっくりと旅の最終場面へと進んで行きます。ただ、ここいらは「富士登山」を目指していない人達が気軽に足を踏み入れる領域なので、人が増えてややややこしい。ま、登山者だけの山ではありませんから、その辺は我慢です。
28_shin6goume 程なく新六合目に到着。富士宮口登山道をそのまま下ってきた人達は、かなりの確率で脚を引き摺っています。お疲れさん。因みに左の山小屋では、ビール中ジョッキ一杯800えんだそうな。降りてきたと言ってもまだ標高は2500m近くありますから、飲みすぎないように気をつけて下さい。私は車の運転があるので当然パス。
29_shin5goume そして無事に新五合目駐車場へ到着。下りではかなり疲れを見せていたZ氏も、ここまで降りてきて大きな満足感を得ているようでした。靴はやっぱり一部擦り切れてしまいましたけどね。まあ、無事で何より。登頂も果たせて何より。よく頑張りました。良き思い出になることを祈ります。私も七回目の登頂でしたけど、十分に楽しむことが出来ました。毎回いろんな目に遭って、いろんな光景を目にして、いろんな人と出会って、いろんな達成感を味わって、飽きません。きっとまた登りに来ることと思います。

エピローグ

ということで、今回はご来光前後の僅かな時間を除いて晴天に恵まれ、大きな問題も無く楽しい富士登山を満喫することが出来ました。同行のZ氏にも感謝。因みに万歩計の数値は17355でした。帰りの道路も概ね空いていて、途中のサービスエリアで眠ったりせずに無事戻ることが出来ましたとさ。Z氏は足柄SAの水をおみやげに持って帰りました。これ、下り線で汲めるといいんですけどね。


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