Rjの登高漫歩
山歩記 - 伊豆大島:三原山(2005.11.20-21)

last modified: 2005.12.09


概略

経路(標高) 地形図 山域
登山口駐車場(550m)〜山頂の一角(673m)〜剣が峰(749m)〜登山口駐車場 Borealis Tengu II GTX 大島南部 [北西] 伊豆諸島

†出発/通過/帰着点の標高はおおよそです。

火山の島

言ってしまえば日本列島全体が火山の島なんですが、その中でも島=火山で今もぶすぶす燻っている伊豆大島、三原山に登って来ました。今回は普段山登りなどしない知人に氏と一泊の旅。に氏が飛行機に乗りたいという目的で企画したので、調布飛行場から10人乗りくらいの英国製小型双発プロペラ機'Islander'で往復しました。

もくじ

  1. 往路
  2. 宿探し
  3. 三原山散策
  4. 宿
  5. 観光
  6. 帰路

往路

出発は調布飛行場。京王線西調布駅から徒歩30分くらいです。途中、コンビニに二回寄っておにぎりやらおやつを買いながら、40分くらい掛けて行きました。地味な旅客ターミナルで手続きを済ませ、てくてくと飛行機まで歩いて行って搭乗。幸運にもパイロットのすぐ後ろの席に着きました。前方や計器類がよく見えて、空を飛ぶと言うリアリティ満点。やった。これまでジェット機にしか乗ったことが無かったので、小さい飛行機とはどんな感じなんだかわくわくです。

にゅるにゅるにゅると滑走路を進み、ぶぃーんとエンジン音が高まり、いざ離陸。時速百数十kmであっさりぷわっと地を離れました。ぶぃーん。北向きに離陸したので、すぐに左旋回。ぐおーっと傾き、丹沢が視界に入って来ます。おお、丹沢。下の地面はまだ数百メートル、どこぞの山の崖から見下ろした程度しか離れていません。車や家、人一人も見分けることが出来ます。うひゃひゃ。

そのまま南下し、南アルプスなんかも見えて素敵な景色。やがて横浜と江ノ島の間を抜け、洋上へ。海は波立っていますが、その波の大きさがよく分からない。しかし小型の漁船みたいなのを見つけて見比べてみると、およそ数mから十数mくらいの幅がある模様。結構風があって、荒れているという程ではないにせよそんなに静かな海面という訳でもないようです。因みに高度計の数値はおよそ350ft.。約1000mですから、自分の生の感覚で把握できない高さではありませんでした。

飛行自体はゆれゆれです。下手なジェットコースターより面白い。感覚として単車に近い部分がどの程度あるのか興味ありました。似ている部分と単車では起こらない部分が混在。機体の中心付近を軸に左右に回転するような動きは、突然ケツが流れた時以外は単車では有り得ない動きでした。いや、それともまた違うかもしれません。あと、がくっと落ちる動きも単車には無い。単車なら地面が突然無くなっても慣性で徐々に落ちるのみですが、この小さいヒコーキではがくっと落ちて頭を天井にぶつけます。ごちっ。

そんな感じでうひゃうひゃしていると、やがて前方に大島が近づいて来ました。おお、島全体が山だ。どちらかと言うとでろでろ流れ出る系の火山。えーと、盾状火山?(ことえりちゃん、盾状火山くらい知ってて欲しい。)最近では1986年に噴火して溶岩がでろでろ流れ出ています。

空港の向こう側へ回り込み、ぐるりと左旋回していよいよ着陸です。飛行時間30分程度でしょうか。調布からの距離がおよそ100km、速度はおよそ200km/h。着陸もあっさりしたものでした。タイヤの摩擦でごっと減速する以外、大した衝撃も無し。着地後の減速時間も短く、あっという間に日常感覚の中へ引き戻されました。飛行機を降り、新しくて立派なターミナルビルへと地べたを歩きます。乗るときも降りるときも、「ヒコーキに乗る!」という大げささが希薄で面白かったです。


宿探し

さて、奇麗な建物の空港ターミナルですが、土産物屋と食事処とでかい駐車場があるだけで、レンタカーの出店などはありません。バスは一日一本で、もう行っちゃってます。島の中心街「元町(もとまち)」地区までは徒歩で恐らく一時間程掛かるでしょう。これは罠だ。仕方なくタクシーに乗り、元町まで行きました。レンタカー屋に行きたいと言うと、「トヨタでいい?」と。「知り合いがやってるんだよ。」と。これが島文化なのでしょうか。私はこういった「島」を訪れた機会がこれまで殆ど無く、その意味でも楽しみにしていました。早速二発目の罠を食らいます。

まあ、こういう機会でも無ければ敢えてトヨタレンタカーなど利用することも無いでしょうし、どうせどこへ行っても借りるのは一番安いやつと決めていたので、そのままトヨタレンタカーの前へ連れて行かれ、タクシーの運転手とそこへちょうど出勤して来たらしいトヨタレンタカーの店員とで話を勝手に決められるままにトヨタレンタカーを利用する成り行きとなりました。借りたのは店舗の前に停めてあったダイハツのミラ。初めて触る車です。と言うより、軽自動車に触ったのは何年ぶりで何回目なんだろう。これも楽しみの一つに数えました。

そのミラ、何故かGPSを使ったカーナビゲーションシステムが装備されていました。これを自分が運転者として利用するのは初めてです。文明の利器だ文明の利器。まずはそこな元町港をしばし眺め、今後の方針をに氏と相談。怪しい食事処で怪しい海鮮丼(と言っても載ってるのはイカとマグロのみ。ただ、そのイカは甘くて美味しかった。)を食った後、行き当たりばったりで宿を探すことに。元町港からさほど遠くない「岡田(おかた)」地区に向かいました。ここには漁港があり、釣り船を出す宿やらそうでない宿がいくつかあるようです。

岡田港へ車を止め、路地を進み、やたらいっぱい居るねこ達に挨拶をしながら見つけた「これは」という一軒の宿へアタック。「こんにちはー!」しーん。「こんにちはー!」しーん。誰も出て来ません。下駄箱を見るといくらかの宿泊客が在る模様ですが、しばらく待っても全くの無反応。あきらめて宿を出て、ねこ達に見送られながら来た道を戻ります。ダメだこりゃ。元町へ戻り、仕方なく観光案内所の世話になることに。

観光案内所で、島の反対側にある「波浮(はぶ)」地区の宿を探すことにしました。民宿がいくつかあるというのでそのどれか・・・と思っていたら、に氏が面白みのなさそうな近代的施設「伊豆大島ほっとセンター波浮」がいいと言いやがりました。に氏がどこか僻地へ旅行する時は、いつもその辺りで一番高そうな宿に泊まりやがるそうです。そんなとこ高いだけで地元漁師が獲って来たうまいサカナとか食えないのに・・・しょぼーん。

ま、そんな連れでもいない限り私がそんな宿へ泊まることもあまり無いでしょうから、今回は妥協しました。に氏がそんな行動様式の持ち主だとは知らなかった。けど、料金はそんなに高くありませんでした。昼過ぎの予約で夕食は用意出来ねえとか言われまして、一泊朝食付きで6500えんとな。ということで、宿も決まったので今度は三原山に登ることにしました。


三原山散策

レンタカーのカーナビゲーションシステムは、道の少ないこの島で役に立ったのかどうか不明です。素朴な地図さえあれば迷うことも無いであろう道を進み、がんがん登ります。ミラは何の特徴も無いような動力特性で、エンジンを上まで回すとやたらうるさい。燃費を気にしてなるべく大人しく走ります。途中、椿が咲いている区間がありました。

ずんずん上り、高原のような雰囲気になり、海も見えるようになると、間もなく登山口の駐車場に着きました。暇そうなじじばば集団が降りて来てがやがや騒いでいた他は静かなものでした。数件の土産物屋兼食事処みたいな店があり、入山者の装備をチェックする係員二人まで立っていました。ハイヒールとかで行って泣きを見る人を止める為でしょう。土産物屋の一軒には、「貸し登山靴」の看板さえありました。

左右に連なった十四軒の店舗中三軒しか営業していない坂道を抜け、目の前に広がる広大な光景の中に佇む三原山を目指して進みます。1986年に流れ出たという黒々とした溶岩の跡が生々しい。初めは少し下り、しばらく平らな道をてくてく進みました。すすきが奇麗。他の観光客は、降りてくるおっさん軍団がちらほら居る程度。静かな不思議な洋上の秋の山。道は舗装路です。

途中、1986年流出の溶岩に道を塞がれ迂回しつつ、やがて道は急登へ。と言っても舗装路で、登る標高差も少ないから時間も労力も僅かです。完全にお散歩気分で来た観光客の人でもはぁはぁ言いながらすぐに登り終えられるでしょう。登山気分で来た人は失望すること請け合いです。ただ、山頂空間の一角に出ると報われます。そこにはただの噴火口がある。遠くには、湯気の立っている箇所も沢山見られる。ここは誰がどんな想定で来ようと、ついこの間噴火したばかりの火山の頂であると知らされます。

舗装も切れ、ごろごろの火山礫の上をお鉢巡りに出発。「展望台」なるものがありますが、取り敢えず忘れてもいい程度の存在です。気温数℃でびーぶー風に吹かれ、ちょっとした山気分。周囲は海なので、山なのに海景色。面白い。すごい晴れた日には、富士山なんかも奇麗に見えることでしょう。この日はあまり遠くまでは見渡せませんでしたが、富士山の反対側にはずらずらと続く伊豆諸島を眺めることが出来ました。

道は三原新山を迂回し、剣が峰へと続きます。お鉢の外側の外輪山との間には平坦で不毛な土地が広がっています。湯気の出ている地べたに接近し、手をかざすと温かい。匂いは殆ど感じられなかったので、ただの水蒸気なのでしょう。風がびーぶー吹いています。低いとは言え完全な独立峰です。寒い季節は油断せずに防寒着を用意して行きましょう。

恐ろしげな噴火口を覗きつつ進み、やがて剣が峰に達し、一休み。でかいスピーカーが二つ、以前の観光名所時代を懐かしんでいるようでした。海外旅行が今程一般的になる以前、恐らく昭和五十年代頃までは、ここはもう少し人の多い観光地だったことでしょう。1986年の噴火、そしてバブル期の到来で、この山へそしてこの島へやって来る観光客はかなり減ってしまったものと思われます。それが余計にこの島を蟻地獄のような存在にしてしまったのかもしれません。観光産業に携わる島民諸氏は、本土からやって来た観光客の汁をちゅうちゅう吸おうと必死です。これはあからさまに失礼な言い方ですが、私はこの山の頂に辿り着き、そこにあるぽっかりと口を開けた噴火口を目にする前の段階で、既にそんな印象を固めていました。アリジゴク。正確に言うと、ウスバカゲロウの幼虫(が作る、餌を獲る為の罠)。

人口約一万。遠くへ行こうと思っても、船や飛行機を使わない限り遠くへ行くことの出来ない土地。閉塞的な空間。ただ、これはこの島の人々の本当の生活を知らない、通りすがりの無責任な冷やかし観光客的視点からの結論に過ぎません。実際にはもっと色々な側面があり色々な人がいて色々な事象が存在することでしょう。今回の旅ではそこまで見るゆとりが無かったというだけの話です。

剣が峰からお鉢の反対側を巡り、元の所へ戻り、埋もれかけた神社を見物して下山しました。傾きかけた陽に輝くすすきが印象的でした。島民や観光客の思惑とは別に、つい最近溶岩の流れたこの土地にすすきは輝いている。すすきがんばれ。因みに、すすき以外にもいくつかの草木がそこで生育していました。あと百年もすればここいらの光景もまたちょっと違った様相を呈していると思われます。或いは再び焼け野原になっていないとも言い切れませんけど。

駐車場に戻り、帰りは「割れ目噴火口」というのに立ち寄ってみました。空港側の海がよく見えて、夕暮れの火山の裾野はどこか温かな雰囲気でした。車で下へ降り、大島周回道路というのを南下し、「地層切断面」の脇を抜けて波浮地区へ。途中、日没を見られるかと車を止めて待ってみたものの、ちょうど雲が遮って沈む夕陽を拝むことは出来ませんでした。残念。


宿

宿は周回道路沿いにあり、すぐに分かりました。かつて「かんぽの宿」だったものを誰かが買い取るか何かして再利用しているとのこと。フロントのあるロビーには妖しげな青い照明が使われていました。チェックインを済ませ、お風呂や「レストラン」の場所を聞いてから三階の部屋へゴー。

部屋は普通の和室でした。取り立てて言うべき事の無い部屋というのは、考えように寄っては素晴らしいものなのかもしれません。荷を置き、やや寛いでお茶を飲みました。まだ夕食には少々早い時刻だったため・・・仮眠。ぐー。

「レストラン」は数十席の薄暗い空間でした。他の宿泊客がぽつぽつ居て、結局全員そこで飯を食っている状態。メニューは期待した通り平凡で、「くさや」などごく僅かなものだけがこの土地を思い起こさせるものでした。ブルジョワのに氏が頼もうと言って頼んだくさやは、アジ系のものでした。ここいらでは、青ムロアジ、ムロアジ、トビウオなどで作られることが多いようです。

ウェイトレスの女の子は二人。どちらも島育ちの子でしょうか。ものすごい美人とか超ぐらまあとかそういうんじゃありませんでしたが、怪しい二人組のヤロー連れにもきちんと接してくれました。気の好さそうな子達です。いつかどこかで出会ったら、島での生活について根掘り葉掘り訊いてみたいものよの、とか思いながら平凡な食事を平らげました。

食事後は部屋に戻りちょっと休んでからお風呂に行きました。大きなお風呂でした。こういった島では水の確保って少し大変なのではないかと思ったんですが、どっから取ってるんでしょうね。石油産出国みたいに海水を淡水化して使っているという雰囲気は無いようだったので、どっかから取ってるんでしょうね。

お風呂の後は、新シルクロード。北京からの観光客がウイグル人の家庭を見物するツアーの話でした。ちょっと作り過ぎ。ネタ切れですかね。でも、その観光客と自分らと何ら変わる所は無いと思った時、何だかどうしようもない気分になりました。ウイグル人の学校で、様々な色の目をした小学生達が北京語を叫びながら学んでいる姿を目にして、日々お金に振り回される生活をしてきたくせに哀しみを抱いてその番組を見ている自分らの傲慢さを呪いました。

番組が終わり、歯を磨いて床に着きました。いや、その前に、夜の海へと光を落とす月を眺めました。静かな夜の海に輝く月の光は、かつてこの島に流された誰かの目をも慰めたでしょうか。


観光

朝、目覚めると雨音。昨夜湿度が上がっていたから多分そんなことになっているだろうと思っていましたので、まあいいやとすんなり受け入れます。朝ご飯は昨夜と同じく「レストラン」でとりました。量が多かったのは覚えています。食事後、準備をして出発。雨は程なく弱まり、殆ど止んだ状態になりました。独立峰は天気が変わりやすい。

初めに、近くの波浮漁港へ歩いて行きました。温帯常緑樹の中の階段を降り(途中、すみれやふきが咲いてました。すみれ?)、港へ出れば海は流石に奇麗です。岸壁の折れ目付近には小さな魚が沢山屯していました。けど同行のに氏はサカナを見つけられず。やあい。

港の先に何かがあると観光用案内地図には書かれていたのですが、に氏に却下されてパス。来た道を戻り、車に乗って走り出・・・した瞬間、僅かに開けた窓から天井の水がどばしゃーっと車内になだれ込みました。こういう車最低。っつか、雨よけのオプション付けてないとどの車でもこうなっちゃうんでしょうか。困ったもんだ。

この日は島の東側を北上しながら、そこいらにある立ち寄れる場所を訪れて行く計画。筆頭は筆島。崖ではなくかろうじて浜となった海岸のすぐ沖につんと立っている、島と言うにはあまりに小さい岩です。その浜は海水浴の季節に海水浴客が来る場所のようで、駐車場やシャワー付きトイレが整備されていました。勿論この季節に泳ぐ人は皆無で、誰もいない中イソギクが咲きそうになっていました。何故か十字架もあって、ええと光景的にはUnrealの'Bluff Eversmoking'の冒頭で遠くに見える、Naliさんが磔にされていたそれにそっくりでした。Sniper Rifleで撃つとSuper Healthが雷光と共に出現するアレ。(分からない人ごめんなさい。とあるゲームの一場面の話です。)

びーぶー吹き荒ぶ風の中、死にかけたかまきりに別れを言ってまた車に戻り、崖の上つまり山の中を縫う周回道路を北上しました。この区間、天気のせいもありましょうが何だか異様に寂しい感じ。時折、左側に溶岩の流れとその向こうの溶岩原みたいな光景が目に入りますが、対向車も殆ど無く殺伐とした雰囲気でした。

その先、「行者窟」というのが次の観光ポイント。大島動物園だか何だかという所から入って行きます。車を駐車場に止め、芝生を下って海岸沿いの遊歩道へ。途中、きょんとさるを見ました。猿はしっぽが長いけどニホンザルに近いもの、きょんは確か八丈島とかにいる鹿のちいさいやつ。なんでそんなもんがそこいらをふらふらしているのか少々不可解でしたが、要するにここいらで放し飼いにしているもの・・・なのか?いいのか?

海岸沿いの遊歩道は、よく整備された山道みたいな道でした。海面からの高度は結構あり、起伏も少々あり、海が見える所とそうでない所がありました。しばらく進み、動物園の裏門からの道が合流し、更に少し進むと海岸に出ました。行者海岸。丸いごろた石の海岸で、幅は結構あります。その先は崖になっていて、そっちの方に行者窟がある模様。ただ、行者窟へ進む遊歩道の階段には柵が設けられていました。崩れたから通行止めだそうな。

その崖の裏側、人が通る道はトンネルになっています。行者海岸トンネル。雨も少し降って来たので、トンネルに入って休みました。持参のおやつを齧ったり。その後、行者窟は崩れているらしいから行けないとして、その手前まで行ってみることにしました。道はコンクリートで造られ、「あそこが行者窟か?」と思わせる岩のくぼみの手前で崩壊していました。崩壊している所の右奥にも洞窟のような空間があり、その奥には役小角みたいな石像と立て看板みたいなものがありました。思ったより広い空間でした。

打ち寄せて砕ける波をしばし眺め、来た道を戻りました。動物園の裏門へ通じる道の分岐で、動物園の方に行ってみることにしました。なんと入場無料。独特の回転柵を抜け、場内へ。坂を上り、やたらきょんばかりいる舎を左右に見て(かもしかもいた)、坂を上りきると他の動物も少し存在していました。因みに、園内ではきょんが放し飼いにされており、森の中をしばしばちょこちょこ走ってました。

やがてでかい岩山と言うか何と言うか、コンクリートの壁の下にやや広大な空間がありました。岩山に棲む角羊やキツネザルが囲われていました。その上には籠の中の猛禽やら池で泳ぐ水鳥、愛嬌者のエミューらが居ました。一応やっぱりここは動物園なんだな、と思える程度の量ですが、今改装中とのことで、改装後にはもう少し動物園らしくなるのかもしれません。ただ、入場無料だから別にどんな状態でも文句はありません。ここへ来てようやく他の観光客と接したことだし。

正門から出ると、小さな土産物屋みたいなのがあったので、そこで「大島牛乳」を買って飲みました。小さい紙パックで、低温殺菌だから味はそこそこでした。車へ戻り、良い頃合いなので空港へと向かうことにしました。に氏が帰りの飛行機が飛ぶかどうかを確認したいと言うので道ばたの公衆電話を探しながら走りましたが、気付くのが遅くて通り過ぎてしまううちに空港入り口の交差点に出てしまいました。結局、空港にある公衆電話で運行を確認しました。

その後、一旦大島周回道路まで戻り、ガソリンを入れ、何リッター入ったかも書かれていないレシートを貰い、再び空港へと向かいました。レンタカーは空港の駐車場乗り捨て。昨日からの走行距離は約90km、ガソリン代は961えんでしたから、走行距離に対するガソリン代は私が普段乗っている&都内でガソリンを入れている車よりも高くついた感じです。ガソリン代が高いのは仕方ないと思いますが(何リッター入れたのか不明だけど)、思ったより燃費も良くなかったのかもしれません。相当丁寧に走ったんだけどな。

車を置き、飛行機が飛ぶまでの間に食事をすることにしました。レストラン椿。この島はそう言えば椿を売りの一つにしているんでしたっけ。ウェイトレスは二人居て、どちらも感じの好い子でした。ただ、この暇なレストランでウェイトレスという仕事をするというのはどんな気分なのか、これまたいつかどこかで出会ったら根掘り葉掘り訊いてみたくなりました。暇な仕事でお金を貰えるならいいじゃないかと思う反面、この閉ざされた世界の中で来る日も来る日もただ暇な接客をするだけ。どんな哲学が育つものやら。

メニューは一つ二つを除いて平凡なもので、その一つ二つも大して「大島色」を出したものではありませんでした。片方はもう切れてたし。私が頼んだものも、味、値段共にごく普通レベル。可も無く不可も無し。それでも、空港駐車場の大きさと止まっている車の数からして、それなりにお客は入るのでしょう。周囲には文字通り何も無いし。


帰路

食後店を出て空港の待ち合い空間のベンチでしばしまったりして、やがて搭乗。昨日と同じ飛行機に、昨日と同じパイロット。でも乗客は異なり、座った席も異なりました。今度は一番前じゃなくて、横に窓がなくてしょぼしょぼな席でした。またあっさりと離陸し、伊豆半島、房総半島、江ノ島やら横浜、ゴルフ場、自動車教習所、新幹線、多摩川、色んなものを上空1000mから眺めている間に調布へと降り立ちました。やっぱり約30分。往路よりは揺れの少ない空旅でした。風が無く穏やかだったようです。

調布飛行場からぽてぽてと歩いて西調布駅へと向かいました。つい先刻までは洋上の火山に居たのが嘘のよう。見慣れた電車を乗り継ぎ、見慣れた駅へ着き、見慣れたコンビニを見送り、見慣れた住宅街を歩いて帰りました。そういや、大島にはコンビニエンスストアというものが一つもありませんでした。レストラン椿のウェイトレス達は、今日合計で何人の客に接したのかな。駅前のコンビニのバイトの子は、今日何分でその人数に接したのかな。そんなことを考えながら帰りました。傾く陽が冬の接近を穏やかに告げていました。


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