Rjの登高漫歩
山歩記 - 飯豊山(2009.07.31-08.02)

last modified: 2009.09.03


概略

経路(標高) 地形図 山域
飯豊山荘〜石転び沢〜北股岳〜梅花皮小屋(泊)〜御西岳〜大日岳〜飯豊山〜本山小屋(泊)〜飯豊山〜大嵒尾根〜飯豊山荘Alpine Pack 60Tydall GTX飯豊山(新潟)飯豊山地

†出発/通過/帰着点の標高はおおよそです。


深く濃い飯豊

2009/7/30 (THU)

夜、都内某所で友人TS氏と落ち合い、コンビニで車中の飲料、おやつ、翌日のおにぎり等を買って出発。関越道練馬ICから日本海東北道中条ICを目指す。(出発時は中条ICが終点だと思っていたし、帰宅後にMapFan Webのルート検索で調べてみてもそこが終点だと出た。)


2009/7/31 (FRI)

しかし実際には日本海東北道は中条ICの先の荒川胎内ICまで延びており(→プレスリリースによると、2009/7/18に開通したばかり)、距離を見てきっと目的の国道113号線(小国街道 alias 米沢街道)へ直接出られるだろうと踏んで行ってみる。正解だった。

R113はいい道で、夜明け前だし交通量も僅少、順調に進む。しかし、県道15号へ右折するところが難しいねん。300m手前に案内板が出たけど、実際曲がる所には案内が何も無いねん。スノーシェードを出てすぐの、赤芝発電所へ下りて行く管理道路への左折箇所で曲がる。R113の下をくぐって右に出る立体交差。小国側(反対方面)からだと、ちゃんと曲がるところにも案内板がある。要するに行き過ぎて引き返しましたのだ。

県道15号へ入るとあとは道なり。思いの外開けた街中を抜け(途中に現役のガソリンスタンドや駐在所等もある!)、やがて飯豊山荘へと到着。山荘の少し上に駐車場が四箇所くらいあり、取り敢えず手前のでかいところ[標高410m]に車を止める。夜明け前、既に先客が一台。こんな時間にこんな山奥へ来てるなんて非常識な人達だなあ。徐々に明るくなる中、出発の準備をしていると、雨がぱらつき始めた。

石転び方面への登山口は少し先にあった。登山届けを出す為の小屋があり、そこで順番待ち。順番待ち。有り得ないと思いつつも順番を待ち、書き、提出する。そしていよいよ出発。最初は車止めのゲートを難なく迂回して林道歩き。森が深い。ブナが巨大。森全体が正に生きている。そんな感じがした。

少し進むと十字路[標高450m]に出る。右前方に温身平(ぬくみだいら)の看板。正面の橋は帰りに戻ってくる所。梅花皮(かいらぎ)沢沿いに右へ進む。堰堤を乗っ越し[標高500m]、間も無く道は所謂登山道になる。石転びの出合まで雪渓のせの字も無いため、普通に夏道を行く。雨は殆ど気にならないレベルだが、霧と汗でぐっちょり濡れる。途中、小さな流れを幾度か横切る。一つには「うまい水」の看板があった。うまかった。

しばらく穏やかに進み、やがてぐぐっと登り、右から大きめの沢が合流してくる。ここが梶川出合[標高700m]。渡渉地点には目印のロープが張られていた。渡る。雨と雪解けで水量が多く、やや大股の渡りになる。落ちたら冷たくてしにそうになると思う。さらにすんすん進み、またしても(今度は更に派手に)登らされた後、大きな沢の合流地点が見えてくる。これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも石転びの関。いや、関も堰も無いけれど、石転びの出合[標高860m]。雪渓が霧に霞んで見えてくる。迫力がある。

いよいよよの、と身支度を整える。と言っても、雨具を着るだけ。雪渓上は寒い。因みにTS氏が最近ゴアテックスのものから買い替えた雨具はベルグテックEX、私がゴアテックスから買い替えた雨具はスーパーハイドロブリーズという防水透湿素材を使ったもの。どちらも表地のナイロンは70dと太め、安くて丈夫な良品だと思う。(どうでもいいけれど、ピッケルは二人ともBlack Diamond、ザックは二人ともZERO-POINT、そしてその中にISUKAのウェザーテック インナーバッグという奇遇。道具選択の発想と金銭感覚が近いのかもしれない。)出合手前のスペースでおっちゃんが一人休んでいた。降りてきた人か。或いは渡渉を諦めて敗退する人か。

出合へと下り、まずは右から流れ込む門内沢を渡る。すぐ上に巨大な雪渓が迫っている。雪渓は霧の中へと消えて行く。対岸にペイントマークなどは見当たらない(と言うか対岸すら霧で霞んでいる)が、適当な場所を探して渡る。水量は多い。水温は低い。やや緊張する。渡り終え、左の石転び沢の左岸(上流から見て左の岸)沿いに少しだけ登り、石転び沢も渡る。水量は多い。水温は低い。良さそうな場所を探して渡るも、一箇所だけ飛び石の間隔が広い。間の水流は速く深い。ストックを突きたい場所に突けない。大股開きでえいと渡る。荷が重いと身重でいけない。

渡り終え、霧の石転び沢を登る。初めは右岸沿いに少し上にある踏み跡を辿り、その後雪渓に乗る。長い雪渓の末端。傾斜は緩く雪質も悪くないので、そのまま靴とストックで登る。霧が深い。眼鏡が曇る。足元もよく見えない。左右の斜面で暖められた生温い風と雪渓で冷やされた冷たい風が混じり、奇妙な体感。そして眼鏡は曇る。裸眼で視力0.1未満だが、眼鏡を取った方がよく見えた。まだ落石多発地帯ではないが、見えないので歩きにくい。それでもずんずん登る。条件の良い雪渓は標高を稼ぎやすい。

しばらく登ると、雪渓がやたら幅広くなった。左の方に延びているのが本石転び沢だろうと見当を付ける。霧でよく見えないが、右からは流れ込む枝沢の水音がする。そちらへ寄ってみると、雪渓から枝沢の脇の小尾根へ乗れる。登山用地図に「水」マーク(水場)があるのがここだろう[標高1230m]。休憩とする。流れ込む枝沢の更に脇にある小さな流れによって、雪渓に風穴が開けられていた。いや、水穴か。

休憩後、雪渓の割れ目を渡った。縦に裂けている。まだ裂けかけで大した幅は無いが、それでもちょっとどきどきした。雪渓上の石が増えてくる。落石の墓場。下手すると自分の墓場。やがて霧の領域を抜け、上方に稜線と梅花皮小屋が見えてくる。いよいよ天空の世界へ。気分が昂揚する中、僅かな登りで北股沢出合[標高1470m]に到着。その先で雪渓から地面に移り、黒滝の少し上の水場で休憩。ええと、雪渓は斜度が上がる前に終わっちゃった?折角持ってきたピッケルもアイゼンも使いどころが無かった。しかし、落石の直撃も無くここまで無事だったことを喜ぶべきだろう。

残りの急斜面は暑かった。ハクサンコザクラやらモミジカラマツ、コバイケイソウ、シロバナクモマニガナ(飯豊には何故か普通の黄花が稀だった)、ヤマハハコ、イワイチョウ、ミヤマキンポウゲ、イブキトラノオ(?)等の花がいっぱい咲いていて綺麗だったけれど、暑かった。結局、雪渓を降りてから一時間半程かけてようやく梅花皮小屋[標高1860m]に着いた。梅花皮小屋は割と空いていた(泊まったのは合計20名弱)。二階の一番奥に荷を置き、サブザックに雨具と水とカロリーメイトを詰めて身軽に出発。すぐ上にある北股岳を目指す。

稜線は花咲きまくり。ここで初めて飯豊名物のイイデリンドウを見た。控え目だけれども確かな花だった。他にも、タカネマツムシソウ、オヤマノエンドウ、イワオウギ、ハクサンフウロ、ヨツバシオガマ、ミヤマリンドウ、ニッコウキスゲ、ミヤマシシウド、ハクサンボウフウだかシラネニンジン(この辺りは自分には区別不能)、ヒナウスユキソウ、マルバコゴメグサ、チシマギキョウ、ハクサンシャジン、タカネナデシコ等等等、挙げたら切りが無いくらい沢山の花々がトンボの乱舞の下に咲き乱れていた。間も無く北股岳山頂[標高2025m]に到着。周囲の景色にしばし浸る。登ってきた石転び沢の大半は雲海に埋もれている。門内岳や門内小屋方面への稜線、梶川尾根などはよく見える。

北股岳から戻り、小屋近くの水場へ水を汲みに行った。稜線直下なのに、有り得ない程の水がだぽだぽと出ていた。なにこれ?水多すぎ。水を汲んでから、小屋横のスペースで夕陽を浴びる大日岳を拝みつつ夕食とした。大日岳はでかい。明日、あそこまで行く。やがて雲海のレベルが上がり、大日岳の肩から滝の如く雲が零れ落ちる様を見ることが出来た。所謂「滝雲」。見事と言う外無い。食後は歯を磨いて寝た。夜中、暑くて汗だくになった。

飯豊山荘
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=375532&l=1394011
梅花皮小屋
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=375239&l=1393837

2009/8/1 (SAT)

4時前にがさがさ騒ぐ音で目が覚めた。ヘッドランプを装着し、トイレに行きがてら外へ出てみた。夜明け前、霧に包まれてひんやりする中、早出のパーティがもう梅花皮岳へと出発して行った。自分は小屋に戻り、朝食。TS氏はピラフを焦がしていた。あれは調理が難しそうだ。自分も同じ製品を持って行ったが、山で試すのは控えた。(帰宅後にフライパンで作ってみたが、後始末が面倒だった。)

仕度をして出発する頃には、すっかり夜が明け切っていた。霧もほぼ晴れている。まずは朝日を浴びて輝く花々を愛でながら、梅花皮岳への登り。ヒナウスユキソウ、ハクサンシャジン、ハクサンコザクラ、ヨツバシオガマ、イワイチョウ、チシマギキョウ、そしてハクサンシャクナゲ等。次なるピーク烏帽子岳[標高2018m]へ向かう稜線の道脇にもその先にも、沢山の花が咲いていた。ミヤマキンポウゲ、ノウゴウイチゴ、シロバナクモマニガナ、チングルマ、何とかアザミ、コバイケイソウ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、コイワカガミ、ミツバオウレン、トモエシオガマ、ミヤマツボスミレ(?)、シナノキンバイ、ミヤマダイモンジソウ、オオバキスミレ、シラネアオイ、ニッコウキスゲ、モミジカラマツ等等等。時折雪渓に乗りながら、気持ちのよい道をずんずんと進んだ。面白いのは、ちょっとした地形や位置の関係か、それまで一切目に付かなかった花が突然現れたりすること。本物の生態系というのは非常に微妙で不思議に満ちている。

やがて右の谷(飯豊川本流)が深くて見えないまま天狗岳[1979m]を過ぎ、御西小屋[標高1980m]へ。小屋裏に荷物を置く。水場は少し離れた所にあるようだったので、まだ余裕があったし汲まずにサブザックの軽装で大日岳へと向かった。初めがっと下り、その後は割と穏やかな道が続く。マイヅルソウなんかも現れる。

そしていよいよ大日岳[標高2128m]への登り。標高差は大したことはない。荷物も軽い。アオノツガザクラ、ハクサンシャクナゲ、ゴゼンタチバナ、ミヤマリンドウ、その他数限りない花に迎えられながら、気温は高いので汗だくになりつつも、そこそこの負荷で登り切った。御西小屋から80分程度。生憎山頂は霧に包まれていたが(大日岳山頂付近は雲に覆われることが多いようだった)、他に人はおらず、静かな最高峰をTS氏と二人で占有した。南側から延びてくるもう一つの登山道を見やると、櫛が岳と思われる顕著なピークが目に付く。その左がオンベ松尾根。いつかは登ってみたいと思う。しかし林道歩きが長い。片道三時間。

しばし寛ぎ、御西小屋へと戻り始める。花々に囲まれた道。途中、コンビニ袋に雪渓の雪とビールを詰めた単独行の男性とすれ違った。大日岳山頂で飲むのだろう。その後、今朝から我々を追うように歩いてきていた20名程の中高年パーティともすれ違った。単独行の男性が山頂で絶望に打ちひしがれませんように。すれ違う時の作法でそのパーティがどういう性質の集団なのか大体見当が付く。先日トムラウシで遭難した18名も、こんな感じだったのかと想像する。ただ、一人一人をとって見ればきっと気の好い人で、いくら落ち度があったとは言え死なねばならぬ程の罪を犯したとも思えない。亡くなった人を思い切なくなる。

御西小屋への登り返しも大した標高差ではないが、TS氏はややばてていたようだった。前日寝不足のまま石転び沢を登った疲れが出たのかもしれない。しかしこの日の宿はもう少し先、飯豊本山小屋なので、あまり休まずに先へ進もうと促した。TS氏は水が足りなくなりそうだったが、水場まで多少距離があるようなので飛ばした。いざとなれば自分の水には多少の余裕があるので、分けられる。

なだらかな稜線の道を歩いていつの間にか御西岳[標高2013m]を過ぎ、ニッコウキスゲの大群落を初めとする花々に囲まれて1988m峰を巻く。駒形山への鞍部からひと登りすると、飯豊本山手前のピークたる駒形山[標高2038m]を通過。この辺りではずっと霧に包まれ、雨が降り出しそうだった。飯豊本山まであと一息、黙々と登るうちにぽしょぽしょと降り始めた雨の中をそのまま進み、遂に飯豊本山[標高2105m]へと着いた。霧に包まれて何も見えなかった。

しばし休憩の後、雨の中を本山小屋へ向かう。途中、ビールを持った集団とすれ違った。山頂で飲もうということだろうが、雨の中雨具も着ずにビールを持って山頂へ行ってビールを飲むのが楽しいのかどうかよく分からない。まあ、死にはしないだろうからいいが。自分らは小屋へ着き、宿泊客で小屋が溢れそうではなさそうなので、この日もテントではなく小屋に泊まることとした。荷を置いて雨具を着込み、水を汲みに行く。小屋番のおっちゃん曰く、「1-2分下って目印を左へ、そこから2-3分で水場、往復15分。」と。自分の計算能力が落ちているのかどうか分からない。実際歩いて確かめた結論としては、下り6分、登り9分で15分という辺りが発言の真意らしい。水は非常に冷たくて美味しかった。

小屋へ戻り、土砂降りの音を聞きながら夕食とした。TS氏はチタンのカップが無いと言って探し回っていた。多分、御西小屋辺りで荷を解いた時に忘れてしまったのだろう。カップくらいなら無くても死にはしない。窓があるにも拘らず、小屋内は暗かった。食事を済ませ、19時過ぎには早々に就寝。明日は晴れるだろうか。夜遅くなると雨が止んでいる様子が伺えた。

大日岳
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=374959&l=1393938
御西小屋
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=375048&l=1394053
飯豊本山小屋
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=375112&l=1394251

2009/8/2 (SUN)

夜中に地震で目が覚めた。震度2くらいか。朝は4時前に周囲の物音で起きた。晴れている。雨具を羽織って外へ出る。夜明け前、雲海の向こうの空が赤みを帯びている。他の宿泊客も起き出して外へ出て来ていた。美しい光景。西側は雲に覆われていたが、日光連山から燧ヶ岳、越後、会津の山々、磐梯山、吾妻、蔵王、朝日、その向こうに月山、そして恐らくは鳥海山までがぽっかりと雲の上に頭を出していた。ただただ見入る。この昂揚は山でしか味わえないものの一つである。

日の出を迎え朝食を摂り、荷をまとめて出発。最終日は一日掛けて長い長いダイグラ尾根を下る。まずは飯豊山頂へ向かう。朝日を浴びた大日岳が徐々に頭を雲に覆われて行く。右に見下ろす大嵒尾根は、途中の宝珠山のピークがその道の容易でないことを象徴的に示している。15kg以上の脂肪を余分に背負ったTS氏の膝が無事でありますように。

飯豊山頂には20名程の集団(昨日見かけた彼らだろう)が固まっていた。掻き分けて通り抜ける。そして大ぐら尾根への分岐から、いよいよ下りへと突入。最近上部の刈り払いが行われたばかりとのことで、道は明瞭だった。気持ちの良い光景を眺めながら、這松と草の道を下る。初めしばらくは楽な下り、そして宝珠山へと近付くにつれて急な斜面を下ることとなる。ここに雪が着いていたら緊張すると思う。

宝珠山との鞍部辺りで既に汗だくだくになってしまった。夏の陽射し。右下遠くに見える谷の雪渓が羨ましい。或いは恨めしい。小休止を挟みながら、花の多い道を進む。道は楽ではない。細かくも激しい登降が続く。花は綺麗。コイワカガミ、タカネナデシコ、ニッコウキスゲ、ミヤマキンポウゲ、ヨツバシオガマ、ハクサンシャジン等等等。そして、ヒメサユリがまだあった。

いくつかの小岩峰を越え、ようやく宝珠山[標高1810m]へ。霧に包まれて景色は楽しめなかったが、涼しくなってよかった。その先も険しい道が続く。そして花も多い。ハクサンチドリがあった。他にもハクサンコザクラやモミジカラマツ、オオバキスミレ、アオノツガザクラ、チングルマ、コケモモ、エチゴキジムシロ(?)等の群落に出くわした。つい先日まで雪が残っていたのだろう。本当に花の多い山である。

「宝珠山の肩」の導標の先、やや厄介なトラバースがあった。急斜面で、足場があまりよくない。慎重に通過する。途中、上に逃げる踏み跡があったが、すぐ先でシャクナゲの薮に阻まれていた。引き返し、大岩を越えて下り、またトラバース。この辺りも雪が着いていたら緊張するだろう。そこから楽ではない道を下り、1499mピークを巻き、幾つかの小ピークを越え、岩壁を纏った大きめのピークが千本峰[標高1450m]。ほんの数十メートルの登りだが、急登。途中、岩場もある。大グラ尾根は楽をさせてくれない。

千本峰で小休止していたら、雨がどしゃばしゃ降ってきた。暑いとは言え雨で全身ずぶ濡れになるのも何なので、雨具を着た。そうしたら、下から夫婦と思しき男女が登ってきた。だいぐら尾根を登るなんて物好きなもんだ。しかし、一緒に登ってくれるおくさんなんていいな、と思った。休んでいるうちに雨は上がり、この先の道で濡れた草木を掻き分ける事を思えば雨具の下は履いたままにしておく方がいいかとも考えたが、やはり暑いので脱いだ。

千本峰の先で千本峰の標柱を過ぎ、やはり濡れた草木で下半身ずぶ濡れになりながら、また小ピークをいくつか越えて休場ノ峰[標高1321m]へと下った。途中、単独行の若い男性とすれ違った。これまた物好きなことで。休場ノ峰の手前で「えー?これも巻かずに登るんかい?」といった風情のピークを越えた。その先、登り返しての休場の峰は、その名に相応しく休むのに好適な空間だった。曇ってはいたが、えぶり差(えぶりさし;エブリは木偏に八)岳が望まれた。1600m級の山だが、日帰りが難しいくらいの深いところにある。いつか訪れる日が来るのだろうか。

休場の峰からは、ダイグラ尾根は普通の道になった。つまり、細かい登降がほぼ無くなり、ただの下りになった。それでも雪の多い土地だから傾斜が急だったり標高が低いにも拘らず岩の露出した痩せ尾根だったりはしたが、そこまでの体力削りの道と較べれば非常に楽になった。途中、長坂清水で休憩し(清水への下りは2分程度、最後の急斜面が片手にボトルを持った状態ではきつかった)、懸念されたTS氏の膝も音を上げる前に無事下り切った。

桧山沢を吊り橋で渡り、大又沢との合流地点の河原でほっと一息つく。汗でぐしょ濡れになったTシャツを脱ぎ、流れで洗った、洗って絞れば、洗う前よりも含む水分量が少ない状態になる。匂いも減る。Tシャツもご苦労であった。しばし休み、いよいよ最後の区間へと入る。残るは玉川沿いの平坦な道のみ。と思ったら、いきなり淵を巻く難路が待ち構えていた。最後まで油断ならない。

玉川沿いの道は深い森の中だった。25分程で温身平の林道へ抜けた。そこからも深い森だった。こんな深い森は関東には無い。二日前の朝と同じ印象。最後の徒歩を味わう。間も無く林道ゲートを抜け、車を止めた駐車場へと帰り着いた。出発時に2台だけだった車は10台程に増えていた。荷を下ろし、身軽になって下の飯豊山荘へと移動した。無料の足湯に浸かる。足湯は熱めだった。43℃程あっただろうか。10分程浸かり、すっかり足が軽くなった。

車に戻り、想定6時間以上の帰途へ着く。走り易い県道を下り、更に走り易い国道を戻り、道の駅関川に寄った。野菜を幾つか買った。TS氏は鮎の塩焼きを食べていた。うらやましい。自分は石見(現・島根県邑南町)の実家に帰っている職場の同僚に下山報告兼ねて携帯メールなぞを送り、早々に出発。まだ先は長い。

国道113号から直接日本海東北道荒川胎内ICへ入れるので、気分的にはかなり楽。飯豊山荘から練馬ICまで、たった二回の左折。途中、長岡の辺りで渋滞という表示が出た。軽めの渋滞。往路でも寄った上崎PAに寄り、給油。その後はただひたすら走る。助手席のTS氏は概ね起きていてくれたので、色々な話をした。こんな時間も貴重だと思う。

新潟の六日町と群馬の赤城付近(?)で、花火大会が催されていた。車窓から大きな花火がいくつも見えた。そんな時期なんだなあと思う。高崎の手前から土砂降りになった。物凄い土砂降りだった。梅雨はまだ明けていないらしい。群馬を抜けると雨も小降りになったので、上里SAに寄った。トイレに行く途中、四人組の女の子とすれ違った。そのうちの一名がすごいきょぬーだったのはヒミツ。。。変なところで、山から街に戻ってきたんだなと実感する。

埼玉県内で多少の渋滞を経つつも時間帯が遅くなったこともあって、練馬の出口まではそれなりに順調だった。まだ電車で帰れる時間だったので、72時間前にTS氏を拾った場所で彼を放り出した。お疲れ様でした。楽しい旅だった。大過なく終了できて良かった。深く濃い飯豊、いつかまた行きたい。

宝珠山
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=375218&l=1394219

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