各登山道の特徴
- 概要
- 吉田口・河口湖口
- 富士宮口
- 須走口
- 御殿場口
- おすすめは?
「概要」の表(別頁)を見ていただくと分かるように、ここは人が少なく、駐車場は十分で、晴れてさえいれば登山口に近いところで御来光を拝めるし、印象的なフジアザミも豊富。また、山頂へ出た所は剣ケ峰に近く、下りでは爽快な砂走りが続き、雄大な富士をたっぷり堪能できる素晴らしいルートです。
以上!
・・・で終わりにしたら詐欺かしら。欠点にも一応触れておきましょう。長いんです。それと、営業している山小屋が少ないんです。2003年8月21日に私が行った時には、登山口近くに一件、七合目と八合目の間に二件しかありませんでした。普通の山の感覚で言えば、それでも多い方なんですけどね。
と、いうことで、普段山に登らない人の初めての富士登山を想定した場合、あまり積極的にはお薦めできません。初めてだけどやたらチャレンジ精神に溢れている人や、他のルートでは飽き足らなかった人にはお薦めです。
ルート概説
- 新五合目(御殿場口駐車場)から二合目まで
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出発点、御殿場口新五合目駐車場の標高は1440m程。新五合目というのは誤解招きな言い方なので、ここでは実際に即した旧い言い方(国土地理院発行の1/25000地形図に従ったもの)にします。一合目と二合目の間。鳥居を潜ってちょろっと登った所にある大石茶屋が二合目です。ここからもご来光を拝めます。「山頂からじゃなくてもいい、とにかく富士山で御来光を拝みたい。」という方は、夜明け前に車で来て十分くらい登ればここで見られます。やった。
- 二合目から二合五勺まで
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大石茶屋からは登山道と下山道が分岐します。標高差約400mの緩やかな登りです。但し、路面は砂礫に覆われてじゃりじゃりです。やや力を食われます。晴れていれば、正面に富士、左斜め前には双子山(二ツ塚)から宝永山を見ながらの登りです。右には並行する直線状のブルドーザー道が見えます。二ツ塚の上のピークとほぼ同じ高さに並ぶ頃、二合五勺の廃墟に着きます。標高約1920m。
- 二合五勺から六合目まで
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この区間の標高差は約900m。四合目付近でブルドーザー道を横切り、時折廃墟を見送りながら、ひたすらじゃりじゃりの道を登ります。六合目には、そこが六合目であることを示す柱が立っています。宝永山を下に見る高さ、標高約2830m。
- 六合目から八合目まで
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先程までと較べると、じゃりじゃりが薄れて大分歩きやすくなります。しかし、標高が上がってきて酸素が薄くなるため、あまりペースは上がりません。心肺の強い人ならそうでもないのかもしれませんが。
七合目から現役の(しかし、夏期でも営業中とは限らない)山小屋が現れます。下山道の分岐を過ぎ、三つ程の山小屋を見送って登っていくと、六合目から二時間程で八合目に着きます。ここで標高約3410m。他のルートで言う八合目よりは上に来ています。残りはあと僅か。
- 八合目から山頂(浅間大社奥宮)まで
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残り標高差約300m、もうひといき。しかし、ここからが大変です。ごろごろ石の道で置いた足が安定せず、歩きにくいのです。今までに私が歩いた雪の無い山道の中で最も登りにくい道でした。ただ、私の行った時は途中で踵に靴擦れが起きてしまっていたので、そのせいもあったのかもしれません。
- 山頂から剣ケ峰まで
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銀明水/銀明館の前で山頂に出ます。向かって左へ行くと、僅かで浅間大社奥宮(富士宮口登山道の最上点)へと出ます。その後は、富士宮口と同じです。浅間大社奥宮の前を通り過ぎ、右にお鉢(富士山の火口)を見ながら馬の背を経て剣ケ峰を目指します。
剣ケ峰へは、標高差50m程の登り。急坂なので(馬の背から続くここは、さしづめ「馬の首」?)、足元に注意してゆっくり登って下さい。薄い酸素の中、疲れている身体にはきつい登りですが、十分程の辛抱です。測候所への階段の下に荷物を置くなり置かないなりして、上にある日本最高地点の標とその先左側の展望台を訪れましょう。
見終わったら来た道を戻ります。荷物を階段下に置いた人は、忘れて行かないようにして下さい。
- 下山:山頂から七合目まで
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七合目までは、登山道と共通です。富士宮口の裏技的下山ルートとして紹介した折にも少し触れたように、登りで大変だったごろごろ石は下りでは苦になりません。落石を起こさないように、丁寧に下ればOKです。登りでは二、三時間掛かったこの苦しい区間も、下りは一、二時間の気楽な行程となります。
なお、このルートでは、へばりながら登ってくる人が「(山頂まで)あとどれくらいですか?」と訊いてくることがあるかもしれません。その際は、自分が山頂からそこまで下るのに掛かった時間を二倍して答えておけばそんなに恨まれることにはならない・・・場合が多いかと思われます。ただ、登りも下りも個人差が大きいので、心配だったら「さあどうでしょう、まだもうちょっとあると思いますよ。」とか何とか曖昧にしてしまう方がいいかもしれません。
- 七合目から二合五勺まで(直帰ルート)
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七合目、日の出館を過ぎると、すぐに下山道が分岐します。案内に従い、下山道を行きます。砂のしゃくしゃくする、下りやすい道です。少し先で富士宮口・宝永山方面への道が分岐していますが、それを見送って左に下りて行きます。
その辺りから先は、快適な砂走りです。砂が深く、柔らかいクッションの役目を果たしてくれるので、大股でざっしゅざっしゅと下れます。これは非常に楽しい。何がそんなに楽しいのかわかりませんが、ひとりでに笑みがこぼれてしまうような楽しさです。元気の残っている人は、走ってみて下さい。一歩3-4mで走れます。
歩くにせよ走るにせよ、土踏まずから着地するような意識で行くといいようです。二合五勺の廃墟まで一、二時間。長い登りの辛かったこの区間も、下りはあっと言う間です。
なお、この砂走り区間では、くるぶしまで覆うハイカットの靴でないと砂が靴に入りやすくなります。ローカットの靴で来ている人は、スパッツを用いる等して砂を防ぐのが無難です。詳細は「必要な装備(道具)」をご覧下さい。
- 七合目から宝永山まで(寄り道ルート前半)
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富士宮口下山の裏技として紹介したルート。登りらしい登りも無く、宝永山周辺から見る宝永火口と富士本峰の眺めは壮大です。他では見られないので、濃い霧に覆われていないようなら行ってみる価値があると思います。
七合目下の分岐を下山道の案内に従って進む所までは直帰ルートと同じ。宝永山・富士宮口方面への案内が出たら、それに従って右へ進みます。なだらかな歩きやすい道です。やがて宝永山頂へと続く稜線(と言うより、火口の東縁)に出ますので、右に宝永火口を見下ろしながら南へと進みます。
なだらかな鞍部(稜線が凹んだ所)で、左に御殿場口下山道への道、右に富士宮口新六合目への道が分岐します。ここでは、すぐ先の宝永山頂を目指し、どちらにも下らずに直進します。鞍部から数分(七合目からだと三十分から一時間程)で山頂です。このルートで行くとあまり「山頂」といった雰囲気のない、ただの「尾根の終点」のようですが、東から南側は切れ落ちた崖になっていますのであまり近寄りすぎないで下さい。
- 宝永山から二合五勺まで(寄り道ルート後半)
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宝永山頂からの眺めを見終わったら、来た道を先程の鞍部(左右への道が分岐している所)まで戻ります。御殿場口駐車場方面へ下山するには、北へ向かって右に下ります。宝永山頂へ続く尾根の横腹をざくざくと下ると、すぐ大砂走り下山道に合流します。向かって右(下方向)へ進めば、三十分から一時間程で二合五勺の廃墟に出ます。大砂走り:富士下山の醍醐味を堪能しましょう。
- 二合五勺から新五合目駐車場まで(両ルート共通)
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ここからは真っ直ぐなブルドーザー道です。先程までと違って砂は深くないので、足にはちょっと負担の掛かる道ですが、2km弱、約三十分で二合目大石茶屋に着きます。なお、ブルドーザー道をそのまま下ってしまうと駐車場よりも下に出てしまいますので、案内に従って大石茶屋方面へと抜けて下さい。
二合目大石茶屋からは登山道と共通の道を下ります。十分程で新五合目の駐車場です。お疲れさま。
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おまけ:御殿場口の登りに掛かる時間の目安
大雑把な目安として、低山を400m/hの(一時間に標高差400m分を登る)ペースで歩ける人なら:
区間 |
時間 |
到達標高 |
標高差 |
ペース |
登山口から二合目(現役の小屋あり) |
0:12 |
1520m |
80m |
6.7m/min. |
二合目から二合五勺(廃墟あり)まで |
1:00 |
1920m |
400m |
6.7m/min. |
二合五勺から四合目(廃材発見不能)まで |
1:00 |
2310m |
390m |
6.5m/min. |
四合目から五合目(廃墟あり)まで |
0:50 |
2590m |
280m |
5.6m/min. |
五合目から六合目(廃墟あり)まで |
0:50 |
2830m |
240m |
4.8m/min. |
六合目から七合目(現役の小屋あり)まで |
0:45 |
3040m |
210m |
4.7m/min. |
七合目から八合目(閉鎖した小屋あり)まで |
1:20 |
3410m |
370m |
4.6m/min. |
八合目から山頂(浅間大社奥宮)まで |
1:10 |
3720m |
310m |
4.4m/min. |
山頂から剣ケ峰まで |
0:18 |
3776m |
56m |
3.1m/min. |
合計(ペースは平均値) |
7:30 |
- |
2336m |
5.0m/min. |
このくらいでしょうか。もちろんこれには個人差があります。上記はあまり高山に慣れていない(薄い酸素の影響を受けやすい体質の)人の場合で、頂上へ近づくに従ってペースが落ちています。高山慣れしている、或いはもともと酸素摂取能力の高い人の場合は、もっと早く登れることと思います(そんな人はこんな記事を見なくても大丈夫でしょうけど)。
なお、上記に休憩時間は含まれていません。例えば、各区間ごとに四分程の休憩を挟むと、合計で約八時間となります。
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